21世紀COEプログラムシンポジウム「生態地球圏システム劇変の予測と回避」


テーマ:「地球温暖化と物質循環」
日時: 平成17年3月4日(金) 13時より
場所: 北海道大学学術交流会館小講堂

【プログラム】
13:00-13:10  −挨拶− 
   池田元美 研究科長 
13:10-14:10  −招待講演− 

   和田英太郎 先生(独立行政法人海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター生態系変動予測研究プログラムディレクター)
    「環境変動と水系の同位体生物地球化学」


14:10-14:40  碓井敏宏 研究員 「沿岸域が海洋の物質循環の果たしている役割について」
14:40-15:10  関  宰 研究員 「森林-河川-海洋の物質循環系に関する地球化学的研究」
15:10-15:30    休憩
15:30-16:00  甲山隆司 教授 「陸域生態系のプロセス解明とモデリング:予測の信憑性を落とす要因は何か?」
16:00-16:30  程木義邦 研究員 「分子生物学的手法を用いた海洋浮遊性細菌群集の活性に対する太陽紫外線の影響の検出」
16:30-17:00  吉江直樹 研究員 「気候帯毎に異なる複雑な生態系を再現する生態系モデルの開発・応用」
17:00-17:30  戸田 求 研究員 「北方森林動態の将来予測に向けた陸面モデルの開発」
17:30-  −講評− 和田英太郎先生


【要旨】
・和田英太郎先生
 この30数年間、窒素・炭素安定同位体比精密測定法を主な手法として、地球化学、海洋学、土壌学、生態学、陸水学、そして生態系変動予測モデルの分野を渡り歩いた。この講演では、私の目から見た‘環境科学の40年史‘から始め、これまで得られた水系の各種同位体マップの成果について、トピック的に紹介したい。観測とプロセスモデル、記述・予測モデルの連携は今後ますます重要になると思われる。この点についてもふれたい。
 第二次世界大戦後、我が国における経済復興を中心とする変革は世界の中でも特異的に激しい流れであったと評価されよう。これに伴った国土利用計画が力わざで行われ、現在に至って色々な局面に歪が顕在化するようになった。
 第2次科学技術基本法に重点項目として環境が取り上げられ、なおかつ総合科学技術会議のなかに地球温暖化、水循環と並んで自然流域共生圏・都市再生が取り上げられたのもこの歪を是正することの重要性が広く認められだしていることの現われとみなせる。ここでは先ずはじめに環境問題の50年史を概括し今後10年間のより確実に想定されることをまとめることにする。
  図1は過去50年間の地球環境問題の主な出来事を私見を持ってまとめたものである。縦軸には大気中の二酸化炭素の濃度をppmv で目盛ってありこの50年間年1ppmv強/年の速度で増加してきたことがグラフの上にとつの曲線から読み取れる。増加曲線上には説明は割愛するが各時代に起こった事件が、また図の上段には世界政治におけるサミットの中心課題の時系列が示してある。第2次大戦終了後、サミットとの中心課題は、戦後処理から軍縮・軍拡、経済問題、へと進み地球環境問題が広く世界の関心を集めるようになったのは1989年の環境国連に引きつずく通称リオサミット以後である。このとき気候温暖化条約と生物多様性条約が締結されている。この流れの中で国際的な共同研究としては、IGYからMABそしてWCRP・IGBP・DIVERUSITAS・IHDP へとつずきGCCycle や LANDが中心になりつつある。
 一方、x軸のしたにはここ20年間に発展した衛星画像とリモセンの動向が纏めてある。
ポストリオサミット10年に開催されたヨハネスブルグサミットを契機として全球観測システムの展開が始まっている。Global,Regional,そしてLocalの壁がなくなるまでに観測の時空間分解能が飛躍的に向上し、計算機の能力の向上とあいまって上記三つの環境問題(気候変動、水循環、流域共生系)は水系レベルの場で結びつくこともそう遠い話ではないように思われる。
 この様な事を考えながら、モンゴルーバイカル湖水系や琵琶湖―淀川水系で得られた安定同位体マップを中心にした話を紹介する。



・北海道大学大学院地球環境科学研究科教授    甲山 隆司

「陸域生態系のプロセス解明とモデリング:予測の信憑性を落とす要因は何か?」
  統合的な地球システム変化予測に向けて、そのコンポーネントとしての陸域生態系のモデリングも進んできている。生態系自体が、時空間的なスケールを異にする階層的なプロセスからなる複雑系であるため、現状の予測モデルも当然ながら限界と不確実性を持っている。こうした不確実性に対する理解は、解決にむけた取り組みを進めていくためにも重要である。ここでは、現状のモデルの大雑把な特徴づけを行い、いくつかの重要な抜けているプロセスについて指摘しよう。
  現状の多くの陸域生態系モデルでは、有機態炭素固定にかかわる植生の生理生態過程と、植生面での微気象学的なガス・水・エネルギー交換過程を組み合わせた、気象−生理モデルがベースになっている。現地観測や、衛星観測との相性も良く、指摘されている観測モデル上の問題点も、このスケールでは今後解消されていくことが期待できる。
瞬間的な生産やガス交換から、より長期(経年スケール)の同化産物の植生内での再分配・成長過程に積算して、植生自体の動態をモデル化する場合に、同化産物分配のメカニズムがまだ判明していない、という問題点が指摘できる。全生態系、あるいは植物個体スケールでの分配モデルは未だに記載的で、生理的なメカニズムと対応がついていない。分配ルールをシミュレータ上で探索する試みの例として、我々のPipeTree (Kubo & Kohyama 2005) について簡単に紹介する。古くて新しい問題として、同齢樹木集団の発達過程のKira-Shideiモデル(葉量時間一定)とRyanモデル(葉量減少) が理論的に不備であることとともに、植生発達にともなって一般に生じていると考えられるメカニズムについて指摘する。
  さらに長期(個体群の更新スケール)の予測では、散布子としての種子散布限界を入れた、母樹密度依存型のモデルがいままでに用いられていない点を問題点として指摘する。種子散布をモデルに加えた実験的なシミュレータでは(Kohyama 2005; Takenaka 2005)、いずれも気候的な森林帯のあいだの境界が、気候変化(温暖化)に対して桁違いの遅延応答をすることを指摘している。これは、散布限界ではなく、侵入種に対する在来種の量的効果(より適応度が低くても、はるかに多くの散布子を供給できる)と個体の長寿命効果によるものである。


・COE研究員  碓井 敏宏
「沿岸域の物質循環:その特徴と海洋における重要性について」
  海洋における物質循環および二酸化炭素吸収において、沿岸域は重要な役割を果たしていると考えられてきたが、時間的・空間的な変動が大きいため研究は立ち遅れていた。しかし近年の研究の発展により、沿岸域の量的重要性および物質循環の特徴が明らかにされつつある。大陸棚以浅の海域が海洋に占める面積はわずか7%であるが、全海洋の基礎生産の14-30%、堆積物への有機炭素埋没の80%、堆積物での無機化の90%、河川から流入した懸濁物の堆積の75-90%、炭酸カルシウムの堆積の50%、漁業生産の90%がそこで起こっていると見積もられている。また大陸棚海域の大半が大気から二酸化炭素を吸収する場になっていることが明らかにされ、大陸棚を含む縁辺海の二酸化炭素吸収量は全海洋の約18%に相当する値であるとの報告がある。ただし、これらの見積もりの精度にはまだまだ改善の余地があり、今後さらに研究が必要である。
  沿岸域の物質循環の特徴として、栄養塩の供給源としては河川の寄与は小さく、亜表層以深を通って外洋からもたらされた海水の湧昇が重要であるとの報告が、近年多くなされるようになってきた。長江という世界でも有数の河川が流入する東シナ海でも、海域に供給される無機態窒素およびリンのそれぞれ37%と7%が河川起源であるにすぎないと見積もられている。一方、河川を通した淡水の供給は陸棚上に密度勾配を生じさせ外洋水の湧昇を引き起こす重要な要因であり、ダム建設など陸上における淡水利用の増加が河川流量を減少させることにより、外洋水の湧昇が低下し沿岸域の生物生産や二酸化炭素吸収が減少することが危惧されている。ただしこの議論は主に海域全体を一つのボックスとみなした物質収支に基づいており、光合成が行われる表層海水での栄養塩収支そのものではない。亜表層以深を通した外洋との海水交換が行われている場合は、沿岸の表層に直接供給される河川水に比べ外洋水の寄与が過大評価になるという問題がある。また表層の栄養塩が枯渇する夏季には、河川を通した栄養塩供給の重要性が高まるとの報告もある。河川水は海水と栄養塩各項目間の濃度比が異なることが多いため、河川水の影響を考える際には量だけでなく組成も重要である。さらに海洋における生物生産を制御する重要な要因である鉄の挙動に関しても、河川水を通した鉄およびそのキャリアーである溶存有機物の供給が重要ではないかとの予測が近年なされている。
  このように、沿岸域の物質循環の重要性と特徴に関しては、概要は明らかにされつつあるものの、未だ多くの課題が残されている。講演では、沿岸域での物質循環の研究の現状について、上記のような話題を中心に、演者らがCOEプロジェクトで観測を行っている十勝沖での研究成果を交えて報告を行うと共に、今後の課題と方向性についても提言を行う予定である。


・COE研究員    関  宰
「森林-河川-海洋の物質循環系に関する地球化学的研究−分子レベル安定炭素・水素同位体比測定による河川有機物の起原推定−」
  海洋に運ばれる陸起原物質の大部分は河川によって輸送されており海洋(特に沿岸域)の生物生産に大きな影響を与えています。そのため陸域から海洋への物質循環を詳細に解明することは生物地球化学サイクルを理解する上で重要な課題の一つと考えられています。この陸と海洋間の物質輸送とそれが海洋の生物生産に与える影響をさらに理解するためには単に海洋に輸送される様々な物質供給量を把握するだけでなく河川における生物地球化学的諸過程を理解することが必要です。しかしながら河川により輸送される物質の起原域やその特性についてはあまり研究が進んでいないのが現状です。本研究では「海洋に運ばれる河川の有機物は流域の何所からどの程度来ているのか?」を推定する新たな手法を確立しそれを河川の地球化学研究に応用することを目的としています。現在私は従来の手法(安定炭素同位体測定)に加え有機地球化学の分野では最新の研究テーマである有機物の水素同位体比測定を導入することによって陸上有機物の起源推定に取り組んでいます。土壌有機物の材料となる植物の水素同位体比は(1)植物が利用する水の同位体比と(2)湿度によって概ね決まりますが、天水の水循環や植物の蒸発散による水素同位体比の変動は非常に大きいため植物の生育環境により多様な値を取ることが期待できます。一方、有機物の安定炭素同位体比は植生を反映することが知られており、植生が多様な地域において有効な手法と考えられます。今回は北海道大学の雨龍研究林において行った事例研究の成果を発表します。


・COE研究員   程木 義邦
「分子生物学的手法を用いた海洋浮遊性細菌群集の活性に対する太陽紫外線の影響の検出」
  水界生態系を対象とした太陽紫外放射の影響に関するこれまでの研究は、単一の生物群や要因を対象としたものが多く、物質循環的観点の研究は行われていない。例えば、紫外線Bは、溶存対有機物の光化学的分解を促進することが明らかとなっている一方で、浮遊性バクテリアの増殖を阻害し、植物プランクトンからの有機物細胞外排出量の増加をもたらす。溶存態有機物量の挙動は海洋における炭素収支、ひいては大気中二酸化炭素濃度に大きく影響すると考えられているが、今後の紫外線Bの増加が、溶存対有機物プールを縮小する方向に働くか、または、拡大する方向に働くかについては未だ研究が不十分と言える。この様な背景には、植物プランクトン・バクテリアなど多種の生物群により構成される微生物ループの研究について、その全体像を定性的・定量的に把握する手法が未だ十分に確立されていないことが挙げられる。本研究では、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE法)などの分子生物学的手法、細菌群集の増殖活性およびDNA損傷量の測定法を導入し、北太平洋亜寒帯域における細菌群集および構成する種毎の紫外線感受性の評価を試みた。


・COE研究員   吉江 直樹
「気候帯毎に異なる複雑な海洋生態系を再現する生態系モデルの開発・応用」
  我々の研究グループは、モデリングという手法を用いて「気候変動の影響評価」や「社会的対策」につながる研究を目指しています。21世紀COEで行われている観測と直接的に比較できるような領域モデル(日本近海を表現する高解像度の3D海洋物質循環モデル)を開発・応用し研究を進めています。
  私は、その領域モデル中で重要な位置を占める生態系モデルの開発・改良を行っています。コンピュータを用いた数値計算だけではなく現場観測や室内実験も行うことにより、文献値のほとんど無い生理的パラメータを補いながらモデリングを進めています。
  本シンポジウムでは、これまでに得られた成果のうち、主な二つについて述べたいと思います。

(1) 現在、海洋物質循環の研究分野で最もホットな話題の一つである「鉄濃度と植物プランクトンの生理活性の関係」を生態系モデルに新たに取り入れ、西部北太平洋亜寒帯域での鉄散布実験”SEEDS I”の生態系モデルによる再現とそのメカニズムの解析を行いました。
  我々のグループがこれまで開発・応用してきた生態系モデル”NEMURO”を元に、鉄への応答の異なるケイ藻 (珪素の外殻を作る大型の植物プランクトン) 2種類 (鉄添加に敏感に反応し劇的に活性の高まるグループと、無反応なグループを仮定) を表現できるようにした”NEMURO for SEEDS”を新たに開発しました。モデル中では、鉄濃度の変化が及ぼす植物プランクトンの生理変化として、最大光合成速度と光-光合成曲線の傾きを変化させました。結果は、鉄散布の数日後から珪藻ブルームが始まるのは、生理的適応に時間がかかるためではなく、鉄に敏感なマイナー種がメジャーになるのに時間がかかるためであること。鉄 (硫酸鉄350kg) の散布 (面積250 km2) の影響は、約40日間続き、少なくとも1720tCの炭素が大気から海洋へ取り込まれ、3870tCの炭素が100m以深へ輸送されたと見積もられました。
  このような「鉄濃度と植物プランクトンの生理活性の関係」をモデルに取り入れることにより、地球温暖化に伴い大陸からの風成塵の供給量・パターンが変化し、日本近海への鉄の供給量が変化したときの影響をより正確に見積もることが期待されます。
(2) 生態系モデル”NEMURO”に大幅な改良を施し、亜熱帯域における生態系の再現性を向上させた拡張版NEMURO ”eNEMURO”を開発しました。
NEMUROは、主として亜寒帯域の生態系 (富栄養、ケイ藻類が優占)を想定したものであったため、亜熱帯域における生態系・物質循環 (貧栄養、小型植物プランクトンが優占) の再現性は低いものでした。eNEMUROでは、亜熱帯域で優占的な小型の生物グループを新たに加え、植物プランクトンを2種から4種に、動物プランクトンを3種から4種に増やしました。これにより、従来のNEMUROより亜熱帯域の再現性が向上し、亜寒帯・亜熱帯両方の生態系の季節変化をより現実的に再現できるようになりました。
このような生態系モデルによる亜熱帯域の再現性の向上は、地球温暖化に伴い日本近海において、海水温の上昇、混合層水深の浅化、表層における栄養塩濃度の減少など亜熱帯域の拡大・亜寒帯域の縮小が生じた場合の海洋生態系・物質循環をより正確に見積もることにつながります。


・COE研究員    戸田 求
「北方森林動態の将来予測に向けた陸面モデルの開発」
  現在、我々の研究グループでは森林動態に伴う陸域過程から大気へのフィードバックプロセスを加味した、大気―陸面相互作用モデル(Multilayered Integrated Numerical Model of Surface Physics-Growing Plants Interaction, MINoSGI(ミノスギと読む))の開発を行っています。MINoSGIは森林群落内の物理環境(風速、放射、気温、降雨、降雪等の気象分布や林内の熱・水・CO2輸送)を詳細に記述する微気象モデルと、樹木個体間の相互作用(競争、枯死、更新)に伴って変化する樹木個体数や葉面積垂直分布の経時変化などを記述する森林動態モデルの二つが結合した数値計算モデルです。この大気―陸面モデルを用いることにより、今後予想される地球環境変化に対する北方林動態の長期的な変動が地域〜グローバルスケールでの気象・気候に与える影響についてシミュレーションを行う研究に取り組もうとしています。
  我々が北方林を研究対象とする理由は、北方林が地球上の陸域面積における全森林面積の約3割を占める存在であること、このことが北方林と大気との間で生ずる熱・水・炭素交換過程が地球(全球)規模の気候システムに大きな影響を及ぼすと考えられていること、そして北方林は温暖化に伴う環境変化に伴う影響が最も深刻であろうと危惧されていること等が挙げられます。従って、我々は北方林のエネルギー・物質循環の観点から、また森林動態の観点から理論的な枠組みを踏まえて大気と北方林との相互作用を定量的に記述することが大変重要であると考えています。
  北方林では樹木の稚樹が定着・更新する過程や樹種のライフサイクルが熱帯・温帯林とは異なります。ですから、将来予測のためには北方林を構成する樹木の環境変化に対する生理・生態的特長を取り込んだ陸面モデル開発を進める必要があります。我々の研究グループでは、遺伝子実験や環境制御実験によって低温・乾燥環境下での北方林の再生・更新に関する生態的機構や、寒冷環境に特有のストレスから回避するための北方林樹種の生理機構(例:葉の老化のメカニズム)の解明を目指しています。また、北方林の開葉/落葉プロセス(フェノロジー)は光ストレスによる影響を強く受けます。北海道では落葉広葉樹が優占する森林が広く分布し、北海道以北でもカラマツを主とする落葉針葉樹が広く分布します。このことは、全球スケールの熱・水・炭素循環の定量的な評価を行ううえで、北方林のフェノロジーの取り扱いはとても重要であることを示唆しています。これらの生理・生態的な知見をMINoSGIに反映させ、次世代の大気―陸面相互作用モデルの構築を目指しています。
  しかしながら、現段階において、長期間の気象・気候変動や陸域植生分布を予測する試みは意外に難しいものです。樹木は、置かれた環境下に応じた生理的応答を示しますが、その応答は環境条件によっても成長段階によっても異なり複雑です。また、樹木は草本種と比べてサイズが大きく、成長速度も遅いため、温暖化を想定した樹木応答に関する実験的研究の多くは、実生時や芽生え後数年間の実験的知見の蓄積に留まっているのが現実で、このことがまた数値実験研究の進展を困難にする要因でもあります。
  それでもなお、樹木の生理・生態学的知見を持ち合わせた森林?大気相互作用の数値モデルの開発は、地球環境変動が問題となっている現状では気象予測や森林の保護・管理という視点から、不可欠であることはいうまでもありません。近年では、森林を対象とした中・長期的な大規模野外実験(森林FACE実験、FACE: Free-Air CO2 Enrichment)が行われていますが、気象学的・森林生態学的観点から多くの注目が集まっているのはこのような状況を踏まえてのことです。森林FACE実験などを通して得られた成果などを応用し、環境変化に対する樹木の生理・生態的応答を陽に取り込んだ数値モデル研究の構築は、室内実験や野外観測と併せて、気象変化や陸域変動の将来予測を定量的に評価していくうえで有効な研究手法と考えられます。
  この度のシンポジウムでは、筆者らが行う北方林動態予測に向けたモデル開発や今後の展望について、またこれまでに行った数値実験の結果等について触れ、一般の方に容易に理解できる話題提供となるよう発表構成に努めたいと考えております。

【シンポジウムの様子】
・和田先生
  

・甲山先生
   

・会場
  



北海道大学 大学院地球環境科学研究院・低温科学研究所
21世紀COEプログラム「生態地球圏システム劇変の予測と回避」
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