「生物難分解性物質のキチン分解系に関する研究」




生態環境科学専攻 環境分子生物学講座
博士後期課程一年 佐藤禅 (指導教官:荒木 義雄)


目的
 クチクラは地圏および海洋圏環境にきわめて多量に存在する、(GlcNAc)nや(GlcN)nなどの糖質およびタンパク質を含む複合糖質である。クチクラの完全な分解にはキチナーゼのみだけではなく、他のタンパク質分解酵素や糖質分解酵素の共存系が必要である。この過程で生産された糖単位はクチクラ分解菌のみならず、クチクラ分解能を有していない多くの生物の炭素源およびエネルギー源として利用されており、クチクラ分解経路の発現は地球上の炭素循環においてきわめて重要な役割を担うと考えられる。 本研究では栄養環境の変化に対応して細菌の代謝経路を効率的に切り換えるB. cereus CHを研究対象として選択し、キチナーゼ産生およびその分解生成物の利用時に作動していると予測されるシグナル伝達経路の解明を主たる目的とし、地球の炭素循環に対するキチン分解系の寄与についてもあわせて検討する。


平成十六年度実験計画
 B. cereus CHでは、キチナーゼ誘導時にDNA結合性を示す転写制御因子および生産されたキチンオリゴ糖を細胞内へ移送するために必要なシグナル伝達系の関与が推測される。従って、以下のようにキチナーゼ誘導時に発現しているキチン分解経路関連遺伝子群の存在を確認する。各種誘導剤添加によるキチナーゼの発現 → mRNAsの抽出 → cDNAの構築 → 適切なプライマ―の作製後に、RT-PCR による、標的mRNAs産物の存在および誘導に伴う変動を検討する。





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