「海洋生態系による地球の自己調節機能−近辺環境の応答とその影響」
(Dc.Th: 地球温暖化の促進/減速を制御している海洋生態系における化学成分の定量化及び機能の把握−過去の各化学成分の復元と将来の予測)



大気海洋圏環境科学専攻 化学物質循環講座
博士後期課程2年 坂本愛(指導教官 渡辺豊)


<背景及び目的>
 地球温暖化の促進/減速を起こす化学成分の変動が海洋の生態系を通じて起きており、この定量化及び機能を知ることが将来の気候を理解するために重要である。しかし、この海洋生態学は未知な部分が多く、さらに物理/化学/生物素過程を包含する総合的な科学であるため複雑である。 
そこで、本研究は温室効果ガス(CO2, N2O, etc)と冷却効果ガス(DMS)を個々に取り上げ、その挙動を把握して、各々の成分の定量化及び機能を理解することを目的とする。また、以上のように気候変化に伴って生物種等が変化することによって、それらの生成量及び大気への放出量はどう影響を受けるのかを個々に取り上げるのではなく、各々の比(温暖/冷却効果)の変化を見ることで、これらの相互関係を明らかにすることも目的とする。
      
<研究の具体的な内容>
 過去のルーチン観測データが存在する道東沖親潮海域に属するA line (42.8?-38?N,144.8?-147.3?E (北海道区水産研究所観測) )において、1~2年間2ヵ月毎に次の項目を実施する。
(1) DMS等とN2Oのサンプリングをルーチン成分(S, T, Chl-a, NO3, NO2, PO4, Si, 炭酸系物質等)観測とともに行う。
(2) 各々FPD, ECD-GCにて測定を行う。
(3) 研究対象海域のDMSとN2Oデータは、他のルーチンデータに比べ数少なくその中に季節変化(bloom期、non bloom期等)が含まれていないので、本研究でその値をとらえる。
(4) 過去数十年のDMSとN2O濃度の時系列変化の還元を試みる。(以上今年度中)
(5) 地球温暖化の促進/減速を制御している海洋生態系における化学成分の定量化及び機能の把握を行い、それらの相互関係を明らかにする。(今年度、来年度)
(この過程には依存成分(ex. 混合層深、UV強度、風速、海洋微生物の存在量、生物種)の複雑な相互関係が含まれるため、慎重にDMSの濃度制御を含んだ生物-化学的相互作用におけるプロセスを重要視)

 以上のことが明らかに出来れば、生物活動が地球上の物質循環にどのように影響を与えてきたのかを過去・現在にわたって化学の目で体系化が出来、将来の気候を理解する上で重要な1ステップとなり、地球温暖化のメカニズムとその影響の解明を目的とするCOEコースに見合った研究であると考える。 




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