「古気候における海洋深層循環と物質循環のモデリング」



大気海洋圏環境科学専攻 気候モデリング講座
博士課程後期課程 1年 三角 和弘(指導教官:山中 康裕)


[研究目的・背景]
 地球温暖化に伴う海洋深層循環の弱まりは,海洋物質循環に変化をもたらし地球環境に大きな影響をおよぼすと考えられている。その予測・回避のためには海洋深層循環に変化が起ったときに物質循環がどのように変化するか理解することが不可欠である.この研究では,物質循環モデルを組み込んだ全球海洋大循環モデルを古気候に適用し地質学的な証拠と比較して考察し、地球環境の変化の将来予測に役立てることを目的とする。古気候に適用することで、現在と異なる海洋深層循環でどのような物質循環が起り、それらがどのような関係にあるか知ることができる。また過去の状態は地質学的証拠として残されているので、モデルの結果が現実の気候を再現できているか確認することができ、同時に古気候の理解にも役立つと考えられる。


[研究計画]
 修士課程で行った温暖な白亜紀の中期のモデリングは、大気の扱い方について不十分な点があったので、それを過去の研究と照らし合わせて修正を行う。それにより,より正しく温暖期の海洋深層循環と物質循環がどのような振る舞いをするか知ることができる。また、古気候のモデリングの手法について理解を得る。


モデルを白亜紀から現在に至るまでの、温暖期、寒冷期、海陸分布の違いを含む様々な時期に適用する。それにより広い範囲の気候システムと物質循環の振る舞いを明らかにする。

 様々な気候におけるモデルの結果を、特定の地質学的なイベントに絞っての地質学的な証拠と比較する。それにより、正しくモデルが再現できているか確認する。再現できているとしたら、なぜそのようなイベントが起ったのか、再現できていなければ、その原因は何であるのか考察を行う。

地質学的な証拠と比較するときは、同位体が地質学的証拠としてどのように残るか知ることが有力である。そこで必要であれば同位体を予報することや、堆積過程をモデルに組み込むというモデルの拡張を行う。




戻る