「寒冷地域に生育するコケ植物の環境応答による凍結ストレス耐性機構の解明」



生態環境科学専攻 生物適応機構学講座 
博士課程3年 南杏鶴(指導教官:竹澤大輔)


研究目的
 地球上の植物は、外界のさまざまな環境変化に適応して生育している。特に、コケ植物は、多くの高等植物の生育が困難である南極大陸や高地のような極寒で乾燥した自然条件下においても生育できることから、氷点下を下回る凍結温度や、凍結によって引き起こされる脱水ストレス、繰り返される凍結融解ストレスなどに対して非常に高い環境適応能力を持っていると考えられる。しかしながら、野外のコケ植物の非常に高い凍結耐性能は、採取した季節や気象条件、土壌性質、乾燥などからくる環境ストレスによる影響を考慮する必要があるため、異なる季節・場所
で採取した場合の種間におけるストレス耐性能力の比較が容易ではなかった。
 申請者は、培養条件やストレス処理条件の統一が容易に行うことができる実験室内での「コケ植物の無菌培養系」を利用することで、コケ植物の進化過程で得られた潜在的な凍結耐性能力の差や、環境応答性の差を生理的・形態的に評価し、寒冷地域に生育するコケ植物の生存戦略における多様性の理解を目的とする。


研究方法
 寒冷地や高地・南極大陸に生育するコケ植物を寒天培地上で無菌培養し、原糸体・茎葉体細胞について、ストレス処理を行い、1)様々な凍結温度における細胞の生存率の変化や、2)凍結抵抗性関連タンパク質の発現変化、3)細胞内に蓄積する水溶性糖の組成変化、4)顕微鏡を用いたストレス処理による細胞形態の観察などの、生理的・形態的変化について評価する。
 なお、ストレス処理には、ストレス応答と密接な関係が指摘されている植物ホルモンのアブシジン酸での処理の他、低温・浸透圧ストレス処理を行い、凍結耐性誘導条件と、細胞内の生理的
変化における相関関係を調べる。




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