スイスアルプス野外実習 2006年度実習報告
−−北海道大学環境科学院 地球雪氷学実習−−
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スイス野外実習5日目


今日の天気はくもり。午後から、天気が荒れるという不吉な予報もありつつ。 ということで、始まりました。氷河観測2日目です。昨日と同じく、列車に乗っ て、いざ、ヨーロッパの最高峰ユングフラウヨッホへ!!!!!この日は天気 も悪く、美しい山々も雲に覆われてしまいました。しかし、昨日ほど風が強く なく、体感温度はそれほど低くなかったと思います。今日も昨日と同じく、い くつかのグループに分かれてそれぞれが異なった実習を行いました。こちらは 杉山チームです。昨日は末吉チームが担当していた観測を行っています。今日、 杉山チームはGPSの観測機の取り付けを行いました。氷河上のいくつかの地点 でGPSを使った測定を行うことによって、Aletsch氷河での実習期間中、どの 方向に氷河がどれだけの距離移動したのかを計算できるわけです。写真中央に ある機械が衛星からの電波をキャッチするGPSのアンテナです。昨日のデータ と今日のデータを使って、流動速度、流動方向の傾斜などを求めます。

今日もGPRを使った観測を行いました。 昨日と同じく、東西200m, 南北100m の直線コースの上を何回か往復し氷層の状態を観測しました。ただ、今日使用 したGPRは昨日のものとは違い、昨日使用したGPRは、機械から電磁波を発し、 その跳ね返りの時間から氷河の層を検出するものであり、今回使用したものは、 二つの観測機を同時に5cmずつ動かし、片方の観測機から発せられた電磁波 をもう一つの観測機が受け取ることにより、氷河中の埋設物を観測するもので す。ゆっくりと動かさないとデータが取れないので、観測機に出される速度の 部分を見ながら、慎重にやらなくてはいけません。お昼は再び、氷河の上でパ ンとチーズとハム。みんな、ナイフの扱いがうまくなってきてます・・・。も う、どこでも生きていける・・・。そんな気にさせられます。

午後、天気がひどくなり、濃い霧が発生して1m先も見えなくなりました。先 に上がった人たちは、とにかく建物の中に避難しました。氷河上に残された仲 間たちが心配です。でも、みんな無事に帰還!!アイスを食べながら、おかえ りなさい☆そして、最終列車までに残された約3時間を利用して、氷河と関連 するいくつかの場所を訪れました。まず、ユングフラウ高地山岳測候所の中を 見学させてもらいました。ここは現在6カ国の異なる研究者の人たちが、ある 一定の期間中、気象や環境変動などの観測に取り組んでいる国際的な測候所で す。 標高3600mの地点にあるこの測候所は貴重なデータを発信し続けています。 ここでは、最大風速80m/sを記録したことがあるそうです。札幌の過去の最 大瞬間風速が50.2m/sだということなので、その風速の激しさがうかがえ ます。他にも、この施設では、エアロゾルの観測機や、夜空にむけて強力な光 線を放射し、宇宙船の中に含まれるスペクトルを測定する機械、大気中の炭素 同位体量から放射線放出量の変化を測定する機器など、さまざまな機械があり ました。下の写真は、ドームの中にあった、スペクトルを測定する機械です。 建物の2階は居住空間になっており、最大12人が生活できるようになっていま す。各個室は、まるでちょっとしたホテルのように快適そうでした。食料など も十分に蓄えられていました。しかし、以前観測のためにここで何日かを過ご したことのある末吉さんによると、やはり、空気が薄いために夜は寝苦しかっ たとのこと。

次に訪れたのは氷河中に存在するトンネルです。氷河上から約30m下にトンネ ルは位置しています。この連絡通路は通信レーダーのメンテナンスを行う際に 利用されるもので、普段、一般人が入ることはできません。だからとても貴重 な体験をさせてもらいました。 氷河は少しずつ低いほうに移動します。興味 深いのは、ここはちょうど分水嶺の上に位置しているため、トンネルの手前半 分は南側へ、奥半分は北側へ少しずつずれているということです。その「ずれ」 をなくすためにトンネルの片側半分を削り、反対側に補充していくという作業 が必要になります。これを定期的に行わないと、トンネルは分断されてしまい ます。大変な作業ですね。坂を上ったり下りたりで,お疲れの人もちらほ ら・・・。

そして、列車に乗って、帰宅。安田くんと田中くんは、アンドレアスとヤンと 一緒にクライネシャイデックまで下山し、観測機器をおろしました。イケメン 2人とは、ここでお別れ・・・。2日間ありがとうございました☆☆今日の夕飯 のメニューはナポリタン。久々に日本でもなじみのあるメニューでした。夜の 講義は、石井さんでした。「こ」がつく雪の見分け方、つまり「こしまり」 「こしもざらめ」は、人の主観によるそうです。また、氷河中の氷板は、一度 溶けた雪が凍って、氷の板となったものであるというような、雪についての講 義を行っていただきました。氷河観測2日目。改めて、氷河の美しさと、その 裏に隠された牙を思い知らされた1日でした。 みんな、明日もがんばりましょ う!!!
文責  塩原 愛 ・ 末松 耕平

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