Graduate School of Environmental Science

環境科学の座標軸を提示する

EESセミナー(10月26日)開催のお知らせ

2023-10-17

下記の要領でEESセミナーを開催いたします。本セミナーは新任教員紹介も兼ねています。興味本位大歓迎です。院生・教員の皆様、奮ってご参加ください。

日時: 2023年10月26日(木) 16:30-18:00
場所: 地球環境科学研究院D201
演者: 伊藤公一柴田あかり

ゲーム理論を通して生態学を覗く
伊藤公一(環境起学専攻・特任助教)
生き物たちが見せる一見不思議な振る舞いの裏には、しばしば「他人次第で自分のベストな振る舞いが変わる」ジレンマ的な状況が影響していることがある。私はこれまで、ゲーム理論とよばれる手法を用いて、生態学の中でみられる様々なジレンマ的現象について理論研究に取り組んできた。本発表では、フィールド研究者と組んで一見不思議に思える現象の解明に取り組んだ、3つの研究についてご紹介する。
一つ目は、ハクサンハタザオという植物の「毛」にまつわる話である。この植物には、葉の表面に毛がある個体とない個体の2タイプが存在しているが、この2タイプが共存している理由として、この植物を食べる虫の「選り好み」が関与していることがデータと理論モデルの組み合わせで示された。
二つ目は、花の色が変化する現象についてである。一部の花では、開花中に花の色が変わり、同時に花蜜の量も減ることが報告されている。一見、色を変えることで「花蜜がなくなった」と正直に伝えているようにもみえるが、実は送粉者を騙す腹黒い戦略である可能性が理論研究を通して示された。
三つめは、サメの活動時間帯の話である。サメは夜行性、昼行性、薄明薄暮性など多様な活動時間帯を示すが、この原因には彼らが変温動物であることと小魚との活動時間をめぐる「鬼ごっこ」が原因である可能性が見えてきた。
以上3つの研究紹介を通して、ゲーム理論で生態学の現象を考察する魅力についてお話したい。

植物の多様な繁殖戦略
柴田あかり(生物圏科学専攻・特任助教)
固着性の植物の多くは、他個体との交配機会である花粉の運搬を昆虫に委ねている。その不確実性の中で、植物は多様な繁殖戦略を進化させてきた。今回は、私がこれまでに調査研究してきた二つの実証研究を紹介する。
一つ目は、ジンチョウゲ科ナニワズの不完全な雌雄異株性の維持機構である。ナニワズの個体群は雌花をつける雌個体と、両性花をつける両性個体から構成される。この両性花は、形態的には雌しべと雄しべをもつが、個体の追跡調査により、まれにしか果実をつけない、つまり機能的には雄であることがわかった。なぜ、両性個体は雌機能を維持しているのだろうか。
二つ目は、アブラナ科ハクサンハタザオの花の上下運動の適応的意義とメカニズムについてである。ハクサンハタザオの花は晴天時に上を向き、雨天時や夜間には下を向く。これまでに、花柄(花の下の茎)の伸長により、送粉昆虫の多い時に上を向き花粉の運搬を促進し、それ以外の時には下を向くことで花器官へのダメージを防ぐ機能をもつことがわかってきた。
 野外調査と操作実験、遺伝子発現解析を組み合わせることで、どのような研究ができるのかを紹介したい。
(問い合わせ先: 露崎 tsuyu@ees.hokudai.ac.jp)

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