050617研究院アワー
日時:6月17日(金) 18:00より(時間が変更になりました。)
場所:地球環境科学研究院2階講堂
講演者:Dr. Francisco Dallmeier(Smithsonian MAB Biodiversity Program)
演題:Ecological Research and Monitoring for Conservation:
Current Trends
and Case Studies from Central Africa
座長:東 正剛 (オゾン層破壊評価分野)
The National Ecological Observatory Network (NEON) will be a continental scale
research instrument consisting of geographically distributed infrastructure,
networked via state-of-the-art communications. Cutting-edge lab and field
instrumentation, site-based experimental infrastructure, natural history archive
facilities and/or computational, analytical and modeling capabilities, linked via a computational network will comprise NEON. The Program is being designed
to transform ecological research by enabling studies on major environmental
challenges at regional to continental scales. Scientists and engineers will use
NEON to conduct real-time ecological studies spanning all levels of biological
organization and temporal and geographical scales.
The National Oceanic and Atmospheric Administration (NOAA) Program is designed to monitor the Global Pulse through a global observation system of systems. It is an international program involving 51 nations. The system projected that will change the way we live and will save the life of thousands of millions of people.
The Energy and Biodiversity Initiative aims to develop and promote best practices for integrating biodiversity conservation into oil and gas development.
The Monitoring and Assessment of Biodiversity Program of the Smithsonian
Institution’s works in collaboration with the energy industry, government and
international scientists and their local counterparts. The team has used science
and adaptive management principles to unveil the rich biodiversity of the Central Africa and in Gabon has provided recommendations for management and conservation. The results of the first comprehensive biodiversity assessment and research in the Gamba Complex serves as the first baseline information for two of the newly created national parks in Gabon, and its relationship with the sensitive Industrial corridor where oil exploration and production has been going on for over forty years. The findings will also contribute to in-situ and ex-situ conservation efforts of endangered species and their habitat for the region. Biodiversity is extremely high in the Industrial Corridor weaved to the landscape with the two adjacent national parks. Forest elephants served as indicators to detect seasonal movements and sensitive areas. The area extensive seasonal and permanent water supplies serve rare, endangered, and migratory species. Five objectives were established at the outset of the program in 2001 during a stakeholder meeting and ensuing consultation processes. A biodiversity Monitoring Program with eight critical elements has been proposed to adequately measure the ecological health of the network of protected areas where the different stakeholders are to assure maintenance of the ecological integrity as well as of the biodiversity of the region.
050602研究院アワー
新任教員特別講演日時:6月2日(木)午後5時0分から(いつもと異なります)
場所:地球環境科学研究院C棟1階104室(いつもと異なります)
講演者:高田壮則 (陸域生態学分野)
演題:生態学における数理モデル−動態モデルから進化モデルまで−
座長: 甲山隆司 (陸域生態学分野)
050513研究院アワー
日時:5月13日(金)午後4時30分から(いつもと異なります)
場所:地球環境科学研究院C棟1階104室(いつもと異なります)
講演者:鈴木範男 (環境起学専攻)
演題:人間と自然の共生を求めて
座長:沖野龍文 (環境起学専攻)
1972年「The Limits to Growth(邦訳:成長の限界)」という本が出版され、こ れまで の物質的“成長”を続けていくことには限度があり、地球環境の保全を真剣に考 える べきであるとの提言があった。それから20年後の1992年、ほとんど同じ著者たち が 「Beyond the Limits(邦訳:限界を超えて)」という本を出版し、再度、地球 が許容でき る人間活動のあり方について強い警鐘を発した。今回のセミナーでは、世界の人 口 増加に伴う環境悪化のうち、二酸化炭素の排出増による地球温暖化に関係する世 界的合意である京都議定書、二酸化炭素排出権などについて解説し、北海道大学 フィールド科学センター・森林圏ステーションが取り組んでいる、森林による二 酸化 炭素吸収能力に関する研究例を紹介する。
050204研究科アワー
2005年2月4日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者:中塚 武 (極域大気海洋学講座)
演題:北東アジアの人間活動が北太平洋の生物生産に与える影響評価−アムー
ル・オホーツクプロジェクトの紹介」
座長:池田 元美 (気候モデリング講座)
北海道東方沖の北部北太平洋は、冬の海水の鉛直対流によって栄養塩が大量に表
層にもたらされ、春に植物プランクトンが大発生する大変生産力の高い海ですが、夏には大量の栄養塩を表層に残したまま生産がストップしてしまう高栄養塩・低クロロフィル(HNLC)海域になります。近年、当海域で夏季の植物の生産が制限される原因が、微量金属である鉄の不足にあることが明らかになってきました。鉄は海水にほとんど溶けないため、植物プランクトンが利用する鉄は大気や河川を通して陸上から輸送されてくる必要があります。つまり、この陸から海への鉄の供給量の変化が、北部北太平洋における生物生産に大きな影響を与える可能性があるわけです。本プロジェクトでは、オホーツク海が、冬に大量の栄養塩が表層にもたらされる海域でありながら、隣接する北部北太平洋と違って、夏までに栄養塩を完全に利用できる(非HNLC)海域であるという事実に着目し、オホーツク海に供給される鉄のフラックスとその海洋における輸送、植物による利用を研究すると共に、最大の鉄のソースであると考えられるアムール川の流域において、どのように鉄が河川水に流入し、海洋に輸送されているのか、そのメカニズムを明らかにすることを目指しています。本プロジェクトは、21世紀COE研究及び、低温研の環オホーツク観測研究センターの研究課題の一つである同時に、文理融合研究による人間−環境相互作用の解明を目指す、総合地球環境学研究所の研究プロジェクトでもあります。特に本プロジェクトでは、アムール川流域で最大の鉄の溶出ポテンシャルを持つと考えられる巨大な湿原域=中国東北部の三江平原の開発などをめぐって、人文・社会科学的研究も進めていきます。本講演では、研究プロジェクトの骨格を紹介したのち、1)鉄の流出・輸送に適したアムー川流域・オホーツク海の特異的性格、2)ロシア極東・中国東北部の政治経済社会状況が物質循環系に与える影響などを中心に、話題を提供します。
050121研究科アワー
2005年1月21日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者: 松村寛一郎(関西学院大学総合政策学部メディア情報学科)
演題:グローバルリスクマネジメント構想
座長: 池田 元美 (気候モデリング講座)
台風による土砂災害、水害は目に見える形で、リスクとして私達の暮らしに影響を与え、防災に対する備えの重要性を認識させる。一方、食料、水、エネルギーに関して、目に見えない形でのリスクが進行している。資源リスクの要因である人口、森林破壊、都市化、所得格差、予測モデルの存在意義に言及したグローバルリスクマネジメント構想を紹介する。
050114研究科アワー
2005年1月14日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者: 山中 康裕 (気候モデリング講座)
演題:大気CO2濃度安定化と放出削減量の関係、それを実現するための研究の現状
座長: 池田 元美 (気候モデリング講座)
本発表は、次のような枠組み的な内容を紹介する。
1994年に発効した温暖化枠組み条約では「気候系に対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させること」を究極的な目的とし、2月発効する京都議定書では先進国5%削減を目指しいる。地球温暖化が進めば(発展途上国が負担増となる)環境破壊への対策(adaptation)費用が増加し、CO2放出を抑制すれば(先進国に負担増となる)経済損失となる緩和(mitigation)費用が増加する。大気中CO2濃度の安定化レベルはこれらのトレードオフとして議論される。EUが提案している550ppmでの安定化のためには、人間活動に伴う放出を21世紀末で年間6GtC、22世紀末で年間2GtC台(京都議定書の20倍に相当する70%削減)まで減少させなければならない。そのためには、石油・天然ガス資源の枯渇・将来価格という視点を含め、風力発電などの再生可能エネルギーの拡大やコジェネレーションによる発電効率向上などの省エネ対策を推進しなければならない。一方、石炭は、同じ発電量に対して天然ガスの約2倍のCO2を放出するが、21世紀中に枯渇することはない。例えば「大気中CO2濃度550ppm安定化」と「発展途上国が(先進国が行ったように)安価な化石燃料を利用して経済発展をする権利」との両立といった視点から、CO2を放出させずに回収・貯留して化石燃料を使用することも緩和策の大きな選択肢の一つである。米国は、このような革新的な技術として、石炭利用およびCO2回収貯留を中心とする国際的枠組み、炭素隔離リーダーシップ・フォーラム(CSLF)や水素経済のための国際パートナーシップ(IPHE)を2003年に立ち上げた。また、IPCCは、温暖化枠組み条約締約国会議(COP)からの要請に基づき、CO2回収・貯留がCO2放出削減対策として認められるかどうか、回収・貯留に関する技術や自然に対する影響などの科学的知見を「CO2回収貯留に関する特別報告書」(2005年発刊予定)としてまとめている。
石炭を燃やしCO2が1kg発生するとき、発熱量2600kcalの40%が電力変換したとし、液化するのに必要なエネルギーが36kcalなので、効率80%での液化は得られた電力の4.3%に相当する(大隅, 2004)。これにCO2を排ガスからの分離回収、輸送、貯留管理を含めたコストが10%程度となれば、エネルギー的には成立する技術であり、全体で6000円/tCO2程度で行うことが考えられている。貯留場所が地中か海洋かにより状況が異なる。地中貯留は、石油会社が石油掘削とほぼ同じ技術を用いて新たに利益を得られ、各々の国内法律で対応出来る。半永久的に管理することが必要となり、もし漏れれば大惨事となる。すでに、日本においても、(大きな話題となることもなく)2003年7月より長岡において地層への(1年半かけて1万トンのCO2を注入する実証実験が行われている。一方、海洋深海隔離は、大気中放出したCO2が海洋表層に吸収され、海洋深層に(人間活動から見ると非常にゆっくりとした速度で)運ばれていくのを人為的に促進すると見なせば、ある意味では自然に優しいものである。しかし、投入されたCO2は全海洋に拡がっていくので、投入後回収を含めた管理は難しく、公海への廃棄物の投棄禁止を定めたロンドン条約との関係など国際的な合意が必要となる。2002年国際的環境団体の反対により中止された(1トンを放出する)ノルウェー実験など、実証実験は今まで行われていない。
人工湧昇や鉄添加などの人為的な栄養塩供給によって植物プランクトンによる光合成を促進させることで、CO2を人為的に吸収させる計画も進められているが、自然の生態系を利用しているために一見易しく見えるが、動植物プランクトンの優占種が交代するなど明らかな生態系の攪乱を行うことになる。この影響が水産資源や海生生物への拡がることが危惧され、私個人としては、必要悪的に行う海洋深海隔離の方が環境に与える影響が小さいものと今のところ考えている。
大気中CO2濃度安定化後の世界では、基本的に「人間活動に伴う放出は、陸上植生による放出・吸収は長期的には小さくため、海洋による吸収分だけ行える」という炭素収支となる。その世界では、温暖化に伴う生態系の変動が年間0.1GtC程度あったとしても無視出来なくなる(年間2GtCの5%に相当)。従って、現在以上に「元々の自然サイクルはどうなっているのか?それが温暖化に伴ってどう変わるか?」を明らかにする研究がますます重要となることを最後に付け加えておく。
2004年11月26日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者: 露崎 史朗 (地域生態系学講座)
演題: 西オーストラリア廃鉱跡地における植物群集の再生
座長: 木村正人(生態遺伝学講座)
- 西オーストラリアに「廃鉱跡地における植物群集の再生」という研究テーマで1年間滞在する機会を得た。なお、西オーストラリアは、生物多様性ホットスポット(要するに珍しい種のたくさんいるところ)に位置する極めて固有種の多いところであり、その特徴も面白く、その辺りを簡単に紹介する。
- 西オーストラリアには数100 kmに及ぶ広大なボーキサイト採掘地があり、主な滞在目的は、その採掘跡地の生態系復元に関する共同研究を行い、日本での応用を試みることである。1983年から採掘跡地で継続調査されているデータを元に解析しいくつかの知見を得たので、これらを紹介したい(まだまだ解析中-多分年内には終わらない)。採掘跡地では、1983年以降、植林・播種(= 種まき)を併用し復元を行っているが、毎年その結果を元に、植林・播種する種組成が変更されている。特に1994年以降は、播種方法を大きく変更した。それらの処理により、採掘跡地が果たして未採掘地の植物群集に近づきつつあるかどうかを検討した。これらの結果を元に、遷移様式と復元の可能性、再生計画の鍵は何か等について考察する。
- 西オーストラリアは火災の多い地方である。火災は生態系の劇的な変化を呼ぶが、必ずしもマイナスの要因ではなく、火災に伴う熱により種子発芽が促進されることは古くから知られていた。しかし、熱ばかりでなく煙が発芽を促進することが近年報告され、煙誘導発芽の生態系復元への応用が試みられている。これまで報告は、火災の多い、オーストラリア、南アフリカ、カリフォルニア、地中海沿岸等に限られているが、日本でもそのような現象があるのではないかという気がしてならない。その部分についても紹介したい。
- 生態系変動に対する自然・人為撹乱の影響は、いたるところで極めて大きいが(たとえば、西オーストラリアの場合は火災と採掘)、これらの機構を組み入れた群集動態予測や復元への応用が必要である。
041015研究科アワー
2004年10月15日(金):17時より:研究科2階講堂
「環境科学院」設立に関する説明会
説明者:池田元美
学生の皆さん。
地球環境科学研究科は水産科学研究科および北方生物圏フィールド科学センターといっしょに「環境科学院」を17年度に開設することになりました。いま本研究科が持っている専攻は少し再編成されるものの、講座はコースという単位にまとめられて、実質的にほとんどそのまま存続します。それに加えて「環境起学専攻」という新しい専攻には、環境の重要課題に直接取り組む研究を行う先駆コース、および広く環境問題について学ぶ統合コース(修士課程のみ)ができます。なお今の研究科は、修士課程在学生が修士を取得するまで、また博士後期課程在学生が博士号を取得するまで存続します。
上に述べたような学院を設立する目的は、地球規模の環境問題を解決するために、その基盤となっている学問領域がよくわかる人を育て、また、基盤領域の基礎を生かして重要課題に取り組む研究者や実務家を積極的に養成することです。皆さんにも設立の目的を理解してもらい、私たち教員と共に地球規模の環境問題を解決する作業に携わって頂きたい。特に博士後期課程に入学しようとする皆さんには、どのような大学院を作ろうとしているのか、よく知ってもらいたいので、ぜひ説明会に来てください。
040917研究科アワー
2004年9月17日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者:田中一彦((独)産業技術総合研究所中部センター・中部大学大学院工学研究科)
演題:イオンクロマトグラフィーによる水質モニタリング技術の最前線
-多機能な分離機構を用いるオンサイト型水質モニターの開発-
座長:古月文志(生体機能化学講座)
種々なイオン成分の同時分離計測を目的とした高速液体クロマトグラフィーの一種であるイオンクロマトグラフィー(Ion Chromatography:IC)は,国内外の種々な公定法に採用される等,高いポテンシャルを有する水質モニタリング法として公認されている.しかしながら,これまでのICにおいては,2台のIC装置を用いて陰及び陽イオンの水質モニタリングが行われており,今後の水質モニタリングの省力化やオンサイト化等の観点から,1台のIC装置に用いて陰及び陽イオンの同時分離計測を可能にするオンサイト型水質モニタリング技術の開発が切望されている.また,これまでのICによる水質モニタリングにおいては,水質評価にとって重要な水質指標である酸度(水素イオン)やアルカリ度(水酸化物イオン及び炭酸水素イオン)及び栄養塩類(リン酸及びケイ酸イオン等)に対して適用できない等の問題点があり,今後はこれらを解決する新規な分離機構(分離カラム)を用いたICの分離科学の高度化研究の実施が不可欠な状況にある.
そこで,我々は,今後の水質モニターのコンセプトを,簡便・迅速・多成分同時計測・ポータブル化・オンサイト化・ネットワーク化等とし,ICの有する多成分同時計測能に着目して,軽量,小型,無(低)公害で情報化にも対応できる性能を備えたポータブルなIC装置を用いるオンサイト型水質モニターの開発に関する研究を,通商産業省・工業技術院,科学技術庁,NEDO,環境省等による支援の下で進めてきた.すなわち,このようなオンサイト型水質モニターの様々な分野への応用を可能にするために,ポータブル型のIC装置(ハードウエアー)の開発に加えて,様々なイオン種の分離計測を可能にする多用途型のIC技術(ソフトウエアー:分離科学)の開発が不可欠であるとの観点から,我々がこれまでに行ってきた日米,日豪,日伊,日中,日韓,日中等との科学技術・環境保護協力協定に基づく国際共同研究によって得られたICの分離科学に係わる基礎的研究成果[米国化学会のデータベース(SciFinder)によるランキング:世界第2位]を踏まえ,産学官[産総研/北大院地球環境/東ソー(株)・旭テクネイオン(株)]が連携・協力して新規な分離機構を用いたオンサイト型水質モニターの開発に係わる実用化研究を実施した.
その結果,水質評価にとって重要な陰及び陽イオンは,弱酸性陽イオン交換樹脂カラムと酒石酸/クラウンエーテル系溶離液を用いるイオン排除/陽イオン交換型ICにより高速かつ高感度に同時モニタリングできた[J.Chromatogr.A,920,239(2001),工業用水,529,25(2002),J.Chromatogr.A,997,219(2003),Bull. Korean Chem. Soc., 24,1324(2003)].一方,酸度(水素イオン)は,強酸性界面活性剤で表面修飾したモノリス型のC18-シリカカラムとドデシル硫酸リチウム系溶離液を用いる陽イオン交換型ICにより1価及び2価陽イオンと共に同時モニタリングできた[J. Chromatogr.A, 997,183(2003),1023,239(2004),1026,191(2004)].また,環境水の有する緩衝能の指標となるアルカリ度のICにおいて,水酸化物イオンは,非イオン性界面活性剤と強塩基性界面活性剤で表面修飾したモノリス型のC18-シリカカラムと硫酸ナトリウム系溶離液を用いる陰イオン交換型ICにより1価及び2価陰イオンと共に同時モニタリングでき[J.Chromatogr.A,1041,95(2004)],一方,炭酸水素イオンは,水溶離液を用いる弱酸性陽イオン交換樹脂カラムと導電率増大カラムを用いるイオン排除型ICにより選択的にモニタリングできた[分化,工業用水,投稿中].更に,この方法は,これまで困難であった環境水中の栄養塩類(リン酸及びケイ酸イオン)の高感度な同時分離計測にも良好に適用された[分化,投稿中].この他に,本研究で開発された新規なIC技術は,種々な光触媒環境材料の性能評価[工業用水, 541,19(2003)],産業排水の処理工程管理[J. Chromatogr.A,1039,141(2004)],陶磁器原料の品質管理[分化,52,1173(2003),工業用水,投稿中]及び発電用水の水質管理[[J.Chromatogr.A,997,127(2003),997,191 (2003),1039,135(2004)]等への応用を可能にする最新のICによる水質モニタリング技術であると言える.
このような新規な分離機構を用いるICの分離科学に係わる研究成果は,産学官が共同開発したポータブルなIC装置を用いるオンサイト型水質モニターに導入でき[環境技術情報ネットワーク(http://e-tech.eic.or.jp/libra/lib_16/lib16.html)(国環研)],様々な適用を通じてその有用性・多用途性が実証された.
040423研究科アワー
2004年4月23日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者:廣川 淳 (分子機能化学講座)
演題:質量分析法を用いた対流圏大気化学過程の研究
座長:中村 博(分子機能化学講座)
成層圏のオゾン層は太陽紫外線を吸収するため、地上生命系には必要不可欠な 存在である。しかしオゾンは強い毒性を持つため、対流圏、とりわけ地表付近で は、人体、植物などにとって有害な大気汚染物質である。また、オゾンは温室効 果気体でもあることから、その濃度変化は地球規模での気候変動にも影響を及ぼ す。対流圏におけるオゾンは、窒素酸化物、一酸化炭素、炭化水素など、おもに 人間活動により排出された化学種の関与する光化学反応を通して生成される。そ のため、産業活動の活発化に伴い、対流圏オゾンの濃度は増加傾向にあるが、オ ゾンの生成・消失に関わる化学過程は、定量的には把握されていないのが現状で ある。私はこれまで、対流圏におけるオゾンの生成・消失過程の理解を目的とし て野外観測、室内実験研究を行ってきた。特に最近は、対流圏オゾンの生成・消 失過程への関与が指摘されている、反応性の無機ハロゲン種に焦点を当て、質量 分析法を用いた観測、実験研究を行っている。本講演ではその現状と展望につい てお話する。また、近年、オゾンとならんで対流圏において広域な大気環境影響 が懸念されているエアロゾル(浮遊粒子状物質)についても、その大気化学過程 の理解を目指して、質量分析法を応用した研究を計画しており、時間があればそ れについてもご紹介したい。
040416研究科アワー(地球環境科学研究科21世紀COEセミナー)
2004年4月16日(金):17時ー19時
場所:研究科2階講堂
演題:「海洋は人為起源二酸化炭素の吸収に役立つか:生態地球圏システム劇変の回避は可能か?」
話題提供
山中康裕(気候モデリング講座):二酸化炭素の海洋貯留計画
工藤勲 (水産科学研究科):鉄散布による海洋生産向上の効果と影響
南川雅男(地球環境変遷学講座):海洋再生に窒素固定の果たしてきた役割
田中歩(生物適応機構学講座):植物プランクトン遺伝子変異
座長:池田元美(気候モデリング講座)
人類は急速に二酸化炭素を排出しています。70年後には今の二倍の二酸化炭素が大気中に存在しているでしょう。そのため地球の平均気温は2度前後上昇すると予測されています。京都議定書で約束したように、我が国は1990年水準に較べ、2010年までに排出量を6%削減しなくてはいけません。計画では削減量の半分程度を森林への吸収で賄おうとしています。しかし森林には成長限界があるはずです。では海洋への吸収はどのくらい可能でしょうか。大気中の二酸化炭素分圧が高いために海洋に吸収されるばかりでなく、海洋中深層に貯留したり、生物生産を上げて吸収量を増やすことはできないでしょうか。生物生産を上げるには鉄散布、窒素固定あるいは遺伝子変異を利用する方法が考えられますが、これらは現実的かつ有効でしょうか。また環境への悪影響はないでしょうか。
これらの可能性について、地球環境科学に基づいて、客観的に議論する場を設けます。皆様のご来場を待っております。
040319研究科アワー(大場忠道先生最終講義)2004年3月19日(金):14時ー16時(いつもと時間が異なります)
場所:研究科2階講堂
講演者:大場忠道(地球環境変遷学講座)
演題:私の歩んできた道
司会:南川雅男(地球環境変遷学講座)
私が生まれてから今日までの間に経験した主な出来事の想いで話をさせて頂きます.子供の頃、小学生の頃、中・高時代、大学・院生時代、会社勤め、助手の頃、助教授・教授時代。後半では、主な研究内容についても紹介するつもりです。私の生き様から何か一つでも参考になるものがあれば幸いです.
040312研究科アワー2004年3月12日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者:池田 元美(気候モデリング講座)
藤原 幸恵(元国連Junior Professional Officer、ユニセフカンボジア事務所勤務)
演題:環境科学院環境起学専攻のめざすもの:国連職員育成の可能性
座長:池田 元美(気候モデリング講座)
全学規模で取り組んでいる学院研究院構想のうち、環境科学院は着実に歩を進めている。その特徴を明確に示すのが、環境起学専攻である。ここでは地球温暖化など環境の重要課題をとりあげ、複数の学問分野を統合して課題解決をめざす教育体制(起学研究コース)を立ち上げようとしている。その一方で、より広く環境問題の実態を知り、原因をつきとめ、社会の理解を深めることによって、問題を解決する作業に取り組む実務家を養成する総合教育コースも開設する計画である。このコースを修了した後の進路は、公務員、学校教員、企業の環境部門担当者、マスコミ、コンサルタント、NGO/NPOに加えて、国連など国際機関の専門家も考えられる。
しかし、このような教育を行うには、これまでの本研究科の教育だけでは足りない。環境科学院では自然科学に基づいた教育を中心にするとしても、社会、経済、法学、医学、国際関係などに関する教育は、他研究科の協力の上にしか成り立たない。本学のような総合大学でこそ可能となる教育体系であるが、その実現には十分な準備が必要である。
様々な職業が思い浮かぶだろうが、本アワーでは、世界にはばたく専門家の中でも、国連職員を取り上げてみる。地球環境を守るためには、国際情勢を知り、先進国ばかりでなく開発途上国の人々と協力しなくては、実質的な貢献はできないだろう。国連はその舞台となるところだ。国連で働くにはJunior
Professional
Officer(JPO)となるが現実的な道である。JPOの経験談を通じて、JPOとなるための試験と必要な技能、さらにそれを身に付けるための教育基盤などを紹介する。具体的な内容は、
1. 国連にある環境問題に関連する機関
2. 国連職員として働いてみて
3.
環境起学専攻への教育体制に関する要望
学院設立を考える人だけではなく、これから将来の道を探す学生諸君も、何かのヒントを得られるかもしれない。ぜひ、参加してみることをお願いする。
040311研究科アワー
2004年3月11日(木):16時より:
場所:北海道大学・情報教育館3F:スタジオ型多目的中講義室
(札幌市北区北17条西8丁目 旧教養棟付近),
講演者:高橋英紀(地球生態学講座)
演題:人と自然の調和を求めて,生物気象の視点で北海道から世界に
司会:坪谷太郎((株)北海道技術コンサルタント)
学部学生のころを含め40年におよぶ研究生活を振り返ると、現在進めている研究がすべて、時間の糸につむがれ20歳代前半のさまざまな体験や学習と結びついていることに気が付きます。学部3−4年生のときに、当時、道北のサロベツ原野で行われていたサロベツ総合開発基礎調査に強制的に参加させられたのが、その後40年に及ぶ湿原研究の始まりでした。研究の対象は中国、イギリス、インドネシアへと広がりました。また、卒論研究として取り扱った「道路粉塵が農業に及ぼす影響」は、卒業後、「防風垣や風食の研究」につながり、「中国東北地方での防風林の研究」、「中国海南島のゴム林の防風の研究」や中国黄土高原の「砂漠化防止の研究」へと発展しました。その間、人が生きるために自然からの恩恵を得ることが必要ですが、度を越すと、自然が崩壊してしまう事例をいくつか見てきました。この脆弱な自然とどのように折り合いをつけながら人が人らしい生活を維持するかが、21世紀の課題と思います。このようなお話を、最終講義の話題とさせていただきます。
040305研究科アワー2004年3月5日(金):17時より:研究科2階講堂
新任教官特別講演
講演者:杉本敦子(地球環境変遷学講座)
演題:北東ユーラシアにおける生物地球科学の展開
座長:南川雅男(地球環境変遷学講座)
ユーラシア大陸は地球上で最も大きな大陸であり、その大きさ故に他の地域とは異
なる様々な現象が見られる。偏西風帯に位置する北東ユーラシア地域は大気の流れを
考えると海から最も遠い地域であると言える。東シベリアにはそれ故、内陸性の乾燥
した気候帯の地域が広がっているが、連続永久凍土帯の存在により、特徴的な水循環
と森林植生を有している。地球規模でも大きな影響を与えうるこの地域の水と炭素の
循環をそれらの安定同位体比を併せて測定することにより様々な空間スケールで解明
を試みてきた。その成果を中心にこれまでの研究内容を紹介する。
生物を含む地球システムを考えるとき、水は生物圏を流れる血液のような存在であ
り、物質循環の支配要因である。水循環・水分環境の変動によりもたらされる生物活
動の変動は、蒸発散やガス交換を通して、また地球システムを駆動し地球環境の変遷
をもたらしてきた。このような地球環境と生物圏の相互作用系の解明を目指ざす分野
として生物地球科学を展開したい。私自身が野外観測を中心とした研究でできること
は限られてはいるが、地面にはいつくばっているからこそ発想できることも多い。生
物地球科学に対する夢と妄想(?)をお伝えしたい。
2003年12月12日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者:谷本陽一(大循環力学講座)
演題:中緯度における海面からの熱放出の変動に海面水温偏差が果たす役割
座長:久保川 厚(大循環力学講座)
海が気候を支配することは良く知られている.日本列島を北東上する黒潮は熱帯から莫大な熱を運ぶため,西部北太平洋の水温は比較的暖かい.この海上には,低温で乾いた大気が冬季の北西季節風によりシベリアから大量に送り込まれてくる.そのため,黒潮海域では地球上のどの海域よりも多くの熱が海洋から大気へ放出されている.このような長期平均としての気候学的な特徴は海洋の黒潮と大気の北西季節風の双方によりもたらされていると認識されている.
しかしながら,中緯度海洋における水温の長期平均からのズレ
-時間変動-においては,北西季節風の時間変動が果たす役割だけが支配的であり,黒潮や親潮による海洋の時間変動が果たす役割はほとんど認識されていなかった.つまり,季節風の変化による大気側の風速や気温の時間変動が強制力であり,海洋側の水温変動はその大気強制力に対する単なる受動態として認識されてきた.風が強いと大気から海洋への熱放出が促進され,それにより水温が冷えると考えられてきた.つまり,お茶を冷ますような原理だけが働いているとされてきた.
一方,熱帯における海面水温は海面からの熱放出を支配し,さらに大規模な大気循環を駆動して気候に影響を及ぼすことがエルニーニョ/ラニーニャ現象に対する全球気候の応答として良く知られている.今回の私たちの研究チームは中緯度海洋における水温の時間変動は大気の時間変動に支配されているだけではなく,水温変動が能動的に海面からの熱放出を規定し,さらに熱帯の水温変動と同じように中緯度大気の時間変動の強制力ともなり得ることを観測的に初めて示した
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2003年11月28日(金):17時より:研究科2階講堂
新任教官特別講演
講演者:鈴木光次(化学物質循環講座)
演題:北太平洋亜寒帯域の植物プランクトンと鉄
座長:山崎孝治(気候モデリング講座)
1年間に海洋植物プランクトンが光合成によって作り出す正味の有機物量(純基礎生産)は、約45ギガトン炭素であり、地球全体の純基礎生産の約40%に 相当する。即ち、海洋植物プランクトンは、陸上植物と同様、大気中の二酸化炭素濃度を減少させるのに重要な役割を担っている。植物プランクトンは、窒素、リンなどを使って生長するが、北太平洋亜寒帯域、東部太平洋赤道域、南大洋域では、窒素などの主要栄養塩類が表層に多量に存在するにもかかわらず、植物プランクトンの量(海水中のクロロフィルa濃度)が予想したものより遥かに少ないことが報告されている。この現象の要因は海域によって異なると思わ れるが、海水中の鉄の不足、動物プランクトンによる高い摂餌圧、水柱の物理構造の不安定さなどが主な因子として挙げられている。今回は、北太平洋亜寒帯 域の鉄に焦点を当て、その起源、植物プランクトンと鉄との関係、そして1999年夏期の北太平洋亜寒帯域横断航海および2001年夏期の西部北太平洋亜寒帯域の現場鉄散布実験で得た研究成果について紹介する。その例として、1999年夏期の航海では、北太平洋亜寒帯域の植物プランクトンの光合成活性に地理的東西差があり、その差は海水中の鉄濃度に違いによるものであることを世界で初めて明らかにした。また、2001年夏期の現場鉄散布実験では、鉄散布3日後に植物プランクトン群集の光合成活性が顕著に改善し、鉄散布13日後では、早くも光合成活性の低下が確認されたものの、海水中のクロロフィルa濃度が散布前の約10倍にまで達していたことを見いだした。そして、このクロロフィルa濃度の増加に伴い、植物プランクトンの優占グループが微小鞭毛藻類から珪藻類に変化したことを海水中の植物色素組成の変化から定量的に明らかにした。この現場鉄散布実験では、上に記したような鉄供給による現場海域の生態系への影響を調べることの他に、地球温暖化対策の1つとして、海洋炭素隔離の可能性を評価することを目的に行われたので、本講演ではその旨についても言及したい。
031031研究科アワー2003年10月31日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者:石井 博(地域生態系学講座:PD)
演題:マルハナバチの各個体における定花性の動態(花選択と記憶メカニズムとの関連)
座長:工藤 岳(地域生態系学講座)
マルハナバチなどの多くのポリネーターは、後天的な花選好性(=Flower constancy :
定花性)を持つことが知られている。例えば、同じコロニー由来の別のハチ個体が、しばしば同じ採餌場で、異なる種類の花を選択的に好んで採餌する。このFlower
constancyは、植物にとって同種間の花粉移動を促進するといった重要な意味を持つ。
Flower
constancyが起こるメカニズムについては、主に2つの仮説が議論されてきた。一つはDarwin's interference
hypothesis(ポリネーターが、いくつもの花に対応した採餌技術を同時に記憶しておくことができないため、1つ又は少数の種類の花に専門化することで効率的に採餌している)、もう一つはSearch
image
hypothesis(ポリネーターが花を効率的に見つけ出すためにサーチイメージを使っている為、サーチイメージに使っている花のみを効率的に見つけだしている)である。この2つの説に共通しているのは、記憶や認知といった神経系の制約が、constancyの原因になっているということである。しかし、神経系のメカニズムとconstancyを結びつけて解析した研究はほとんどない。
ハチの神経系のメカニズムに関しては近年Menzel
(1999)などによって、階層的な記憶構造の存在が明らかにされつつある。たとえばミツバチには「短期記憶」から「長期記憶」までの、少なくとも5種類の記憶形態があるようだ。長期の記憶は多くの記憶が蓄えられるが検索に時間がかかり、短期の記憶は容量は小さく変化しやすいが容易に検索できる。
以上のメカニズムを考慮しChittaka
et. al.
(1999)は、長期記憶はconstancyを説明するには容量が大きすぎるため、短期記憶がconstancyの原因になりうると推測している。つまり、ハチが同じ種類の花ばかりを連続で訪問するのは、直前に訪れた花の情報が最も呼び出しやすい情報として短期記憶に蓄えられているからかもしれないと推測している。しかし、ハチがかなり長いブランクの後でも好みの花を選択し続けるという観察例も多数あり、一概に決め付けることはできない。
そこで本研究では、マルハナバチの各個体を8-16往復(巣箱-採餌場)にわたって追跡し、異なる記憶形態が花選択行動に与える影響を抽出することを試みた。ここでは、2種類の人工花序(青花花序●と黄花花序○)を交互に配置した採餌場を用意し、そこを一匹のハチ(=エゾオオマルハナバチ)が自由に採餌できるようにした。また、ハチ個体が巣と採餌場の間を2往復するごとに花序の密度を変えた。この実験で以下の結果が得られた。
1)各個体の花選好性は数往復にわたり維持された(例:青花を好む個体は一度巣に戻った後も青を好むことが多い)。2)花序密度が小さい時の一往復内での訪問順序は「●●○●●○●●○●」とか「○○●○○●○○●○」になる傾向にあったが、3)花序密度が大きい時は「●●●●○○○●●●」とか「○○○○●●●○○○」になる傾向にあった。 1)は花選択行動への「長期/中期記憶」の影響を、3)は「短期記憶」の影響を示唆する。また、2)と3)の比較から、ハチが「花序間距離」に対し、異なる花選択行動をとっていることもわかった。今回の結果から、「短期記憶」「長期/中期記憶」「花序間距離」が、同時に影響しあってハチの花選択行動が決定されていることが示唆された。
特別企画:21世紀COE:紫外線影響評価グループ
2003年9月19日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者:東正剛 (情報医学講座)
長谷部文雄(大循環力学講座)
程木義邦 (COE特別研究員)
演題:オゾン層破壊および紫外線の生態影響に関する研究
座長:池田元美(気候モデリング講座)
成層圏大気中の塩素化合物や臭素化合物の増加傾向にはほぼ歯止めがかかったと考える研究者も少なくないが、南極オゾンホールの拡大傾向は依然としてつづいていること、中緯度や低緯度地方の成層圏でもオゾンの減少傾向が認められることから、オゾン層破壊の問題を今後とも注視していく必要がある。COE申請にあたっては、特に地球温暖化問題とオゾン層破壊の問題が密接に関連していることに着目して観測およびモデルによる研究を進めることを提案した。たとえば、温室効果ガスによる対流圏の温暖化は成層圏の気温低下をもたらすと考えられるし、温室効果ガスでもあるオゾンの減少も成層圏の気温を直接低下させるかも知れない。これにより、北極成層圏の冷却化が進むと、極渦や成層圏雲の発達を促し、北極オゾンホールを発生させる可能性もゼロとは言えない。日本最北端の総合大学である北海道大学にあって、オゾン層破壊問題と取り組む意義は大きい。
また、オゾン層の破壊によって増加する紫外線が地球生態系にどのような影響を及ぼすのかを予測することも重要である。われわれは、特に海洋生態系における食物連鎖や物質循環に及ぼす紫外線増加の影響に着目して研究を進めている。紫外線が植物プランクトンの光合成や成長を阻害することはよく知られているが、溶存態有機物を高次栄養段階に戻す上で重要な微生物ループに及ぼす紫外線の影響もより正確に評価する必要がある。微生物ループの中で要の役割を果たしているバクテリア類の生態はこれまでブラックボックスであったが、近年における機器の発達や分子生物学的手法の導入により、かなり詳細な研究が可能となってきている。本研究ではこれらの機器と手法を駆使しながら、紫外線が地球における物質生産の要である海洋生態系に及ぼす影響を少しでも明らかにすることをめざしている。
2003年9月5日(金):17時より:研究科2階講堂
講演者:Howard J. Spero 教授(カルフォルニア大学 Davis 校、地学教室)
演題:From living
foraminifera to the fossil record: A multi-species approach for
reconstructing water column hydrography in glacial oceans
座長:大場忠道(地球環境変遷学講座)
要旨
Stable isotope data from eastern equatorial Pacific (EEP) core TR163-19 (2°15′N, 90°57′W, 2348 m) are presented for the surface-dwelling foraminifers Globigerinoides ruber and G. sacculifer and thermocline-dwelling Globorotalia menardii and Neogloboquadrina dutertrei. Using species-specific normalization factors derived from experimental and plankton tow data, we reconstruct a 360 kyr record of water column hydrography across the past three glacial cycles. We demonstrate that G. ruber maintains a mixed layer habitat throughout the entire record, while G. sacculifer records a mixture of thermocline and mixed layer conditions and G. menardii and N. dutertrei record thermocline properties. We conclude that G. sacculifer is not appropriate for paleoceanographic applications in regions with steep vertical hydrographic gradients. Results suggest that this region of the EEP had a thicker mixed layer and deeper 13CDIC boundary between the surface and equatorial undercurrent during the last two glacial periods. A shift in N. dutertrei and G. sacculifer geochemistry prior to ~185 kyr suggests water column structure and chemocline gradients changed, possibly due to a shift in the position of the undercurrent relative to this site. The timing and magnitude of glacial-interglacial 13C variations between species indicates that near-surface carbon chemistry is controlled by changes in productivity, atmospheric circulation, and advected intermediate water sources north of the Antarctic polar front. These results demonstrate that when properly calibrated for species differences, multispecies geochemical data sets can be invaluable for reconstructing water column structure and properties in the past.
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講演者紹介:Howard J. Spero 教授は、1979年に Texas A&M
で修士を、1986 年にカルフォルニア大学 Santa Barbara 校で博士を取得し、3年間PDとして South Carolina
大学で過ごした後、1990年から Davis 校のスタッフになられました。酸素安定同位体で有名な Emilianii
の後を継ぐような研究を一貫して行って来られました。有孔虫、サンゴや貝などの炭酸塩骨格の同位体の研究ばかりでなく、それまで非常に困難だった浮遊性有孔虫の飼育に成功し、その殻の酸素・炭素安定同位体比や
B, Mg, Cd, Sr, U などの微量元素の取り込みなどの基礎研究から古海洋研究まで幅広く手掛けられております。最近では有孔虫の殻の Mg/Ca
比から古水温を算出する研究も共同で行っており、これまでに Nature や Science
に多数の論文を発表しておられます。今回の講演は、海底コアに含まれる生息深度の異なる浮遊性有孔虫の殻の酸素・炭素安定同位体比から、氷期・間氷期の気候変化に対応した過去の海洋における水温躍層の移動を復元しようという興味深い内容のお話しです。大勢の方のご来聴をお願いします。大場忠道
2003年7月29日(火):15時より:研究科C棟104講義室
(いつもと曜日、時間、場所が異なります)
講演者:益永茂樹 教授(横浜国大・環境情報研究院)
演題:ダイオキシン汚染の解析:過去、現在、未来
座長:田中俊逸(生体機能化学講座)
要旨
日本のダイオキシン汚染は廃棄物の焼却が主要な原因のように思われてきたが、必ずしもそれだけではない。環境調査結果に基づいて汚染原因を探ったところ、過去に使用された農薬類からも多量のダイオキシンが放出されていたことが判明した。この原因解明にはダイオキシン類の異性体情報が利用された。ここでは原因解明に至る経過、現在の汚染状況、そして、将来予測について紹介する。
講演者紹介:益永先生は日本のダイオキシン研究の第一人者であり、詳細な異性体分析に基づいて発生源解析を行い、我が国におけるダイオキシン汚染がゴミ焼却場からのものだけではなく,かなりの部分が1960−70年代に大量に使われた除草剤によるものであることを明らかにしている。講演では、このような解析例を紹介して頂くとともに、低濃度汚染物質に関する研究方法、その解析方法、さらにはそれらを用いた将来予測についてもお話し頂けるものと思われる。
030718研究科アワー2003年7月18日(金) 17時より 研究科2階講堂
講演者:謝 尚平(ハワイ大学国際太平洋研究センター)
演題:宇宙から見える海と空のカップリング
座長:谷本陽一(大循環力学講座)
エルニーニョ・南方振動に見られるように、大気と海洋間の相互作用が気候変動に重要な役割を果たしている。しかし、広大な海は従来の手法では十分に観測されておらず、特に1000キロ以下のスケールにおける大気と海洋の相互作用の様子はほとんど分かっていない。このような空間スケールは極めて重要で、例えば西岸境界流の幅は100キロ程度で、また縁辺海も1000キロ程度もしくはそれ以下のスケールを持っています。 雲の影響をほとんど受けないマイクロ波センサーによる衛星観測が1990年代から盛んに行われるようになり、海洋観測に革命をもたらしつつある。今回の講演では、このような新しい衛星観測を用いた研究を紹介する。具体的には、黒潮や湾流が海上風や雲に及ぼす影響、東シナ海の海底地形が局地気候に及ぼす影響、また夏季南シナ海の湧昇フィラメント、などを例に取り上げる予定である。
紹介文:謝(Shangping Xie)教授は主に大気海洋の相互作用および気候変動について多くの研究者が注目する研究を行ってこられました.例えば,熱帯収束帯(IPCZ)の北半球への偏在は長年の難問でありましたが,謝教授は大気海洋結合波動の重要性を初めて示すとともに太平洋気候における南北非対称をもたらすのはアメリカ大陸であるという西方コントロール理論を打ち出しました.最近はハワイ大学において日本の研究者も含む国際研究チームを導き,新しい衛星観測技術を利用した大気海洋相互作用の研究に新風を吹き込んでいます.特に,一昨年Scienceに発表した数千キロにも及ぶハワイの島陰に関する論文はマスコミでも取り上げられ多くの方の記憶にあると思います.謝教授は1999年10月まで本専攻の助教授として活躍され,久しぶりの札幌長期滞在となります.今回の訪問では,船舶観測の多い海域において私たちが作成する高解像度船舶データセットを衛星観測と組み合わせて,大気海洋相互作用研究の新しい可能性を探っています.
030620 研究科アワー2003年6月20日(金) 17時より18時 研究科2階講堂
特別企画:21世紀COE:汚染物質(評価修復)グループ
講演者: 田中 俊逸(生体機能化学講座)
沖野 龍文(生体機能化学講座)
嶋津 克明(物質機能化学講座)
座長:乗木新一郎(化学物質循環講座)
汚染物質(評価修復)グループでは、低濃度環境汚染物質に関して、探索→影響評価→調査→修復という一連のシステムを稼働させながら、人や生態への影響やその修復法に関する研究を展開しようとしている。今回はその研究計画の概要とともに2・3のトピックスについて紹介する。
1)グループの研究計画の概要並びに環境影響因子としての腐植物質(田中俊逸)
環境汚染物質、特に低濃度で人や生態系に影響を与える物質に対処していくためには、探索→影響評価→調査→修復という一連のシステムを稼働させることが必要である。システム中のそれぞれの要素は相互に関連しており、新しい指標に基づく影響評価法の開発は、新たな汚染物質や環境影響因子の探索を可能にする。また、環境修復法に関する方向性を示すことができる。
土壌有機物の一つである腐植物質は、その化学構造から環境中で錯形成、酸化還元、界面活性能など多様な機能を示し、汚染物質の動態等に大きな影響を与える環境影響因子の一つと考えられる。腐植物質の機能の幾つかを紹介し、その環境影響因子としての役割を議論してみたい。
2)未知環境汚染物質の探索(沖野龍文)
赤潮やアオコなどの有毒プランクトンの発生、PCB、有機スズ化合物や水銀などの生体濃縮など、水圏の生物は化学物質のレベルにおいても非常に大きな問題となっている。また、各地である生物が大量発生するという現象が報じられ、これも生態系機能低下の結果と考えられる。
そこで、未知環境汚染物質の探索研究として、水圏生物を対象に、グループ内の協力により、神経芽細胞の分化あるいはアポトーシスの誘導、促進といった評価法を用いてスクリーニングする。また、北海道でも大量発生して廃棄物として問題となっているヒトデの有効利用に関する天然物化学的研究を展開する。
3)電気化学法による硝酸性窒素の無害化(嶋津克明)
工場廃液や肥料の過剰投与により地下水の硝酸性窒素汚染が進行している。硝酸性窒素は酸素欠乏症やがんを引き起こすと言われており、無害化技術の早急な開発が求められている。私達は将来有望な修復技術と認識されつつある電気化学法による無害化を検討し、これまで電気化学系では最高の活性と選択性を有する電極触媒の開発に成功した。硝酸汚染の現状、電気化学系の特徴などを交えてこれまで得られた研究成果の概要を紹介する。
030620 研究科アワー(第2幕)2003年6月20日(金) 18時より 研究科2階講堂
特別企画:「学生諸君の要望は何?」
教官代表:池田元美
昨年公表された学生生活実態調査報告書には、本研究科への要望が多々掲載されていました。それに対し、教官からは
*分野横断型講義を増やし、体系的にする。
*シラバスをていねいに記述する。
*指導方法の客観的評価ができる体制作り(授業参観、複数指導教官制など)。
*本研究科学生に対する別途アンケートの実施。
*上記報告書には含まれていなかった留学生からも意見を聞く。
などの対応が提案されました。
教官としては、これらが本当に学生諸君の要望に応える第一歩であるのか、確証を得てはいません。いずれアンケートで皆さんの意見を聞くにしても、直接話を聞く機会を設けることにしました。最大限、言いたいことの言える環境を用意するよう努力しますので、皆さんの参加をお願いします。
030613研究科アワー2003年6月13日(金) 17時より 於2階講堂
講演者:Dr. F.-F. Jin (Department of Meteorology, University of Hawaii at Manoa, Honolulu)
演題:Dynamics of synoptic eddy and low-frequency flow (SELF) feedback
座長:渡部雅浩(大循環力学講座)
Amidst ceaselessly stormy atmospheric circulation, there are prominent patterns of persistent variability in the planetary circulation, such as the Antarctic Oscillation (AAO), Arctic Oscillation (AO) or North Atlantic Oscillation, and Pacific-North America pattern. Associated with the planetary-scale low-frequency variability, there are systematic changes in the storm track activity. In this paper, we present a dynamical theory to delineate the internal dynamics of the organized modes in the planetary circulation and storm track variability. We consider a stochastic basic flow that consists two parts: a time-mean deterministic flow and a stochastically transient flow. The former is the climatologic flow and the latter is regarded as normal storm track activity with observed stationary statistics. We hypothesize that organized modes in the anomalous low-frequency circulation and anomalous storm track activity are cultivated in this basic flow through a positive synoptic eddy and low-frequency flow (SELF) feedback. By assuming that the normal storm track activity can be characterized as Gaussian processes, we derived a general and explicit form of a linear operator for the SELF-feedback. We will further validate the formalism of the SELF-feedback based on the observed data with a barotropic model and a primitive equation model respectively. Analytical and numerical solutions of linear dynamic systems with SELF-feedback will be given to illustrate the mechanisms of organized low frequency modes in the planetary circulation and storm track variability.
030606研究科アワー2003年6月6日(金) 17時より 研究科2階講堂
講演者:入野智久(地球環境変遷学講座)
演題:鹿島沖MD01-2421コア解析から明らかになった黒潮変動と日本列島気候変動との関係
座長:大場忠道(地球環境変遷学講座)
日本列島東岸沖は、西岸強流である黒潮と親潮がぶつかり合い、北太平洋の中でも表面水温と表面塩分の南北勾配が最も大きい海域である。特に現在、黒潮前線(黒潮の北の潮境い)が通過している鹿島沖は、過去における黒潮前線の南北移動と、その気候変動との関わりを調べる上で最も効果的な海域である。
2001年6月のIMAGES(International
Marine Global Change
Study)航海において、鹿島沖の水深2,224mから採取された45.82m長の大口径長尺ピストンコアが得られた。堆積速度の速い日本沿岸海域でこれだけの長さ(過去14万年前までに遡る)の堆積物試料が得られたのは初めてのことであり、地球環境変遷学講座のメンバー(大場忠道代表)を中心とする総勢15名の研究グループが結成され、精力的な解析が開始された。
まずは浮遊性有孔虫殻のAMS14C年代・底性有孔虫殻の酸素同位体比・火山灰層序により精密な時代決定がなされ、本コアは過去14万年の古海洋・古気候記録をおよそ100年以下の解像度で連続記録していることが確かめられた。浮遊性生物化石群集・浮遊性有孔虫殻酸素同位体比・アルケノン水温の解析から、最低水温は最終氷期最盛期の後半(約14000年前)で認められ、現在よりも6℃低かったことが分かった。この水温は現在の八戸沖の水温に相当し、親潮水が鹿島沖まで到達していたことが示され、黒潮前線が南下していたことが示唆される。他方、最高水温は最終間氷期(約12万年前)で認められ、現在よりも4℃高かった。この水温は現在の宮崎沖の水温に相当し、最終間氷期には黒潮前線が北上し、鹿島沖は黒潮本流の影響下にあったと考えられる。このように,鹿島沖では過去14万年間に現在の東北北部から九州の気候の違いに匹敵する大きな表層水温変化があったことが示された。一方、陸源砕屑物の粒度・鉱物組成および花粉組成の解析から、最近1万年間および8万年前・10万年前・12万年前に降水量が増加し、それに伴う河川流出の増加によって堆積速度が速くなったことが示唆された。特に、8万年前・10万年前・12万年前の降水量増加期においては、花粉組成から比較的低い気温、各種水温指標からは比較的高い表層海水温が示され、大気と海洋の温度差が拡大したことが大気の相対湿度を高め、多雨気候につながったものと考えられる。 以上の結果は、一つの堆積物試料から多くの気候・海洋変動記録を同時に取り出すことによって実現されたものである。そしてこの成果によって、氷期ム間氷期サイクルにともなう黒潮変動と日本列島気候変動との間の密接な関わりが初めて明らかとなった。

