北海道大学大学院環境科学院 ガイア
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北海道と地球環境

3月 網走

 地球温暖化により、北海道で流氷が見られなくなる危険性が唱えられて久しい。昨冬(2006年〜2007年)は、砕氷船に乗っても半分の確率で遭遇できなかったそうである。ところが、今冬(2007年〜2008年)は、流氷の当たり年だったようで、早速実物を見学してきた。冬の期間中、JR北海道では、知床斜里から網走までのオホーツク海沿岸で、流氷ノロッコ号なる臨時列車を走らせている。列車の側面がアクリル板で覆われて、寒風にさらされることなく、冬のオホーツク海を眺望することができる。


北浜駅流氷展望台からオホーツク海と知床半島を望む


また、網走港からは、砕氷船オーロラ号が就航しており、オホーツク海の流氷を間近で見ることができる。流氷で覆われた海は、白一色かと思いきや、砕氷船が割った氷から覗く青い海水や緑の氷のグラデーションや氷の上に止まる海鳥が見られるため、意外にカラフルである。流氷は、海鳥たちが羽を休めるのみならず、シャチなどの外敵から逃れたアザラシが出産するために格好の浮遊物で、オホーツク海の野生動物の生態を観測する上でも適した場所である。


見渡す限りの流氷と砕氷船

砕氷船からのぞく流氷の断面

流氷の上に止まるオオワシ

 極東最大の流域面積を持つアムール川から流れた淡水は、シベリアからの寒風によって凍り始め、海流に流されながら成長し、日本のオホーツク海沿岸に1月下旬頃漂着する。流氷は、大量の淡水が太平洋と隔てられたオホーツク海に流入するため塩分濃度が低くなることや厳しいシベリア寒気団によって効率的に凍結されることなどの地形的な条件と、塩分濃度が低く凍りやすい水が海水よりも軽く相分離しやすい科学的真理が、絶妙に組み合わさって、北極圏でもない北海道でも見られる現象である。最近は、コンピューターが高性能化し、地球規模の自然現象がシミュレーションしやすくなってきているが、流氷に関しては漂着直前までその量を予測することは難しい。地球温暖化が流氷に与える影響や、流氷がなくなることによるオホーツク海の生態系への影響は、まだまだ観測と研究が必要である。
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