地球 Γεια  Earth

Γεια 進め!地球科学の統合モデリング
山中 康裕    やまなか やすひろ  

 多くの人は、観測から得られた知見の定量化や統合化するという、最後の総仕上げ的な役回りをモデルに期待しているようである。しかし、私は、観測から簡単に得られないであろう知見を得る先駆けの役回りをモデルに期待している。

 地球科学の多くの分野にまたがる統合モデルは発展途上中の不完全な道具であるが、それを使って(将来完成度の高いモデルを用いても同じ結論が得られるだろう)本質的かつ基礎的な知見を得たいと思う。道具を良くすること(モデルの開発改良)には興味をあまり持たないが、もし新しい知見が得られるならば、別々の道具から新しい道具も作る。2つの不完全なサブモデルを組み合わせるとき、よく分からないもの同士なのでもっと分からなくなる、もしくは、ある程度分かるもの同士だから何かが分かる、と捉える両方の立場がある。私は、前者の”何か”が将来の検証に耐えうるものかどうか慎重になりながらも、後者の”何か”を得たい。振り返ってみると、大気海洋結合大循環モデルによる北大西洋深層水の形成や停止 (Manabe and Stouffer, 1988)や、統合気候-炭素循環モデルによる温暖化に伴う土壌有機物の分解に伴うCO2放出(Cox et al., 2001)など、世界に先駆けた統合モデルから得られた知見は、言われてみれば(大規模モデルを用いなくても直感的に分かる)ごく当たり前と思えてしまう本質的かつ基礎的なものであった。

 地球温暖化に伴う海洋生態系や物質循環の変化は、全球や年平均では大きくはないが、亜熱帯-亜寒帯の遷移する特定海域の春季ブルーム後半のみに大きな変化が見られる(Hashioka and Yamanaka, 2006)。ところが、水産資源の基礎となるマイワシやカタクチなどの小型浮魚類が生育・生存に重要な海域や時期であるために、商業魚類の大幅な減少が起こりうる。これらも当たり前かもしれないが、将来の検証に耐えうるように研究の完成度を上げなければいけない、砂上の楼閣(シリコンチップ上の白日夢)にならないためにも…


Γεια 電気化学法による水環境の修復
嶋津 克明    しまづ かつあき  

 電気化学は電気エネルギーと化学エネルギーの変換を電子移動という視点で扱う分野である。最近話題の燃料電池やリチウムイオン電池は、化学エネルギーから電気エネルギーへの変換を担うデバイスである。逆方向のエネルギー変換、すなわち電気化学による化学物質生産としては、水の電気分解や有機電解合成などが行われてきた。しかし、電気化学は有害化学物質を無害な物質に変換する環境修復技術に対してはこれまでほとんど用いられて来なかった。これはおそらく電気は高いという認識に基づくものと思われるが、6価クロムの電気化学処理法が吸着法や化学処理法に比べ廉価であることは、アメリカでは以前より知られていた。日本においても、人件費や処理の全プロセスにかかる費用を含めると、電気コストが電気化学処理法の否定要因にはならないことが認識されてきており、関心を持ちはじめた研究者や企業が増えてきている。

 電気化学環境修復では、有害物質を前もって分離する必要はなく、直接無害化除去する。したがって、処理の全プロセスにおいて必要とするのは電子と水だけであり、化学薬品を一切使わないクリーンな処理法である。処理法自体の環境負荷も修復技術の適性を考える上で重要な要因であり、これが電気化学法の重要な魅力の一つになっている。電気化学環境修復において最も重要なのは、触媒である電極の界面構造設計である。私たちは、地下水を汚染し人体に重要な影響を及ぼす硝酸イオンを窒素ガスまで還元して無害化する電極の開発について研究を行っている。これまでに、イオンの逐次吸着という新たな電極調製法により、貴金属使用量が0.3 μg cm-2と極めて少ないのにもかかわらず硝酸イオンの処理速度が最も速い電極の開発に成功している。開発した電極を燃料電池様モジュールに組み込みと、規模に応じた水処理が可能になる。残念ながら、現時点での生成物中の窒素ガスの割合は約50 %に留まっており、これを大幅に増加させることが研究室の重要なターゲットになっている。
チをとりますが,この過程を経て,フィールド・インフォマティクスの手法の確立を目指します。