「海藻が生産する含ハロゲン化合物に関する研究


  海水中には、高濃度でハロゲン化物イオン(Cl-; 19000 mg/L、Br-; 65 mg/L、F-; 1.3 mg/L、I-; 0.06 mg/L)が存在しているので、海洋生物は何らかの形でこれらのイオンと関わりを持っていることが想像されます。事実、海洋生物からは含塩素化合物、含臭素化合物、および含ヨウ素化合物が発見されています。特に陸上生物の代謝産物には見られない多種多様な含臭素化合物が海洋生物から単離され、構造決定されています。しかし、含フッ素化合物は未発見!!これらハロゲン化合物についての以下の研究を行っております。
   ケモタクソノミー(成分分類学)

  紅藻ソゾ属(Laurencia)の海藻は、形態が類似しているため分類が困難な海藻の一つです。ソゾ由来の含ハロゲン二次代謝産物11-13)は種特異的であり、その生成は環境要因によって左右されません。従って、それらを識別形質とした成分分類学が有効で14-16)、生合成過程を辿ることで系統分類学への路が開ける可能性があります。


   ハロゲン化合物の生合成機構の解明

  ソゾ由来の含ハロゲン化合物は、ブロモペルオキシダーゼ(BPO)の働きによって生合成されると考えられています。しかし、その機構に関しては未だに不明な部分が多く、また、ソゾのBPOのキャラクタリゼーションについてはほとんど行われていません。


   ハロゲン化合物の海洋生態系での役割

  ソゾを含めある種の海藻は、多種多様な含ハロゲン化合物を大量に生産し蓄積しています。海藻は何のためにハロゲン化合物を作っているのでしょうか。その役割の一つに植食動物からの摂食を免れる化学的防御物質として機能していることが分かっています6,17)。また、海洋微生物に対しても防御物質として機能している可能性が示唆されています8-10)


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