2012年度沼口賞受賞者および授賞理由一覧

2012年度沼口賞受賞者および授賞理由一覧

沼口修士論文賞は、自然をこよなく愛し、その仕組みを理解しようと多大な情熱を 以って数々の優れた研究に取り組んだ故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐような研究を奨励する趣旨で2001年に設立されました。環境科学院への改組に伴い、2006年度からその授賞母体が環境起学専攻に移りました。本論文賞は毎年、環境起学専攻の当該年度の修士論文の中から、専攻の理念にふさわしい優れた研究を論文賞選考委員会が選考し、授賞します。
2013年3月25日 修了祝賀会において「沼口賞」の授賞式が行われました。

沼口賞授賞者選考理由

1.長内雅浩君:とろろ昆布を吸着体とする重金属イオンの除去法の開発

重金属汚染は依然として深刻な環境問題である。本研究は、我々にとって身近な食品の一つであるとろろ昆布の、重金属イオンに対する吸着材としての可能性について研究したものである。とろろ昆布は加圧成型した昆布を削って得られた食品であるが、本研究はとろろ昆布の薄さと軽さに注目し、吸着能力が高く回収の容易な吸着材の開発を目指して研究を行った。その結果、とろろ昆布が鉛イオンに対して高い吸着能と速い吸着速度を示すことを見出した。しかし、吸着に際してとろろ昆布からの有機成分の溶出が認められたため、有機物の溶出を抑えるための前処理法を工夫し、種々の溶媒での洗浄や架橋及びゲル化反応の効果について検討し、架橋反応とゲル化を組み合わせることによって、鉛イオンへの吸着能を損ねることなく、有機成分の溶出を抑制できることを示した。さらに、とろろ昆布をチップ状にすることによって、容易に回収できる吸着材となりうることを証明し、この際のチップの厚さと吸着速度との関係を速度論的に考察した。

 以上の研究は、主に長内君自身の着想と研究計画によってなされたものであり、食品という身近な物質でも、重金属イオンの吸着材になりうること、前処理を行うことによって、有機成分の溶出という問題点を解決し、実際に使用可能なチップ状吸着材の開発までこぎつけたことは、新しいタイプの吸着材の開発へつなげるものであり高く評価できる。

 沼口修士論文賞は故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐ研究を奨励する趣旨で前大気海洋圏環境科学専攻の修士課程修了学生を対象として設立されたものであるが、2006年度からは改組に伴い環境起学専攻の論文賞として引き継がれ、環境起学の理念にふさわしい優れた研究を行い修士論文をまとめた学生の中から選考されることになった。本委員会では論文(研究)の完成度はもとより、課題解決型であるか、分野横断・統合性についての評価を行った。環境起学は環境と環境の変化を科学的に調べると同時に、得られた知見を利用して包括的かつ統合的な環境の改善や修復に役立てる方法も探索する学問であるとするならば、本論文は環境起学専攻の理念と目的にもっとも合致し、受賞に相応しいと認められた。


沼口賞受賞者選考委員会     露崎史朗、荒井眞一、新岡 正、藤井賢彦、白岩孝行(委員長)


2.森田真史君:北海道における未利用森林木質資源の暖房エネルギーとしてのポテンシャル及び活用可能性の検討

低炭素社会の実現にとって、化石燃料からバイオマス燃料へのエネルギーシフトは、ひとつの大きな課題である。本研究は、北海道の木質バイオマスの暖房用燃料としての利用可能量の精密な見積もりと、その普及を阻害している要因を明らかにしようとしたものである。この研究により北海道の市町村の実際の森林利用計画、樹種毎の伐採可能年齢、木材としての利用割合を考慮して、より現実的な燃料として利用可能な木質バイオマスが、持続的な森林管理の下、将来に渡ってどの程度確保できるのかが市町村毎に明らかになった。また、灯油販売店の顧客データと顧客のインタビューを通しての意識調査から暖房用木質バイオマスの普及を阻害している最大の要因は木質燃料についての情報不足であり、広く普及啓発が必要であることが明確となった。

 以上の研究は、低炭素社会の実現に向けた具体的な道筋を示すものであり、社会実装に直結する有意義な研究成果として高く評価できる。

 沼口修士論文賞は故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐ研究を奨励する趣旨で前大気海洋圏環境科学専攻の修士課程修了学生を対象として設立されたものであるが、2006年度からは改組に伴い環境起学専攻の論文賞として引き継がれ、環境起学の理念にふさわしい優れた研究を行い修士論文をまとめた学生の中から選考されることになった。本委員会では論文(研究)の完成度はもとより、課題解決型であるか、分野横断・統合性についての評価を行った。環境起学は環境と環境の変化を科学的に調べると同時に、得られた知見を利用して包括的かつ統合的な環境の改善や修復に役立てる方法も探索する学問であるとするならば、本論文は環境起学専攻の理念と目的にもっとも合致し、受賞に相応しいと認められた。

沼口賞受賞者選考委員会     露崎史朗、荒井眞一、新岡 正、藤井賢彦、白岩孝行(委員長)

Graduate School of Environmental Sceince, Hokkaido University