2017年度沼口賞受賞者および受賞理由

2017年度沼口賞受賞者および受賞理由

【2017年度沼口賞受賞者】
2017年度は2名の学生が沼口賞を受賞しました。

(1)
氏名: 北市 仁
カワシンジュガイ寄生成功率へ影響を与える要因: 宿主魚類との同所性及び宿主魚類の疾病

論文要旨

【選考理由】
 生物間相互作用を詳細に理解することは、生態学理論の深化、生物多様性の低下機構の解明および将来予測に寄与する。本研究は、絶滅危惧種であるカワシンジュガイに注目し、その生活史に必要不可欠な寄生宿主であるヤマメへの寄生成功率に影響を与える環境要因の一部を明らかにした。野外複数河川から採取した両種を実験水槽環境下で飼育し、採取地点に基づく様々な組み合わせで人工的に寄生を行うことで、採取場所の同所性・異所性は寄生成功に影響を与えないことを示した。一方で、寄生部位となる鰓の疾病奇形が、寄生成功率を低下させることを示した。複雑な寄生関係を実験環境下で巧みに操作し、粘り強い観察を通じて、当初注目していなかった疾病奇形の影響の解明へと見事につなげた。
 以上の研究は、疾病奇形の影響を定量的に報告した世界初の事例として高い新規性が認められ、カワシンジュガイ個体群の良好な再生産環境保全に寄与する応用性も有する。生物試料の野外での採取と実験水槽での操作実験、そして顕微鏡下での寄生状況・部位・個体数計測まで多様なアプローチを複合的に用いた重層的な研究計画・成果は高く評価できる。
 以上の理由から、本論文は環境起学専攻の理念と目的に合致し、受賞に相応しいと認められた。


(2)
氏名: Imam Fathoni
Antimalarial activity of secondary metabolites isolated from the marine cyanobacterium Moorea bouillonii and the red alga Laurencia sp.(海洋ラン藻 Moorea bouillonii と紅藻 Laurencia 属から得られた2次代謝産物の抗マラリア活性)

【選考理由】
 マラリアは三大感染症の一つであり、熱帯地域で蔓延している。患者の多くは発展途上国あるいは貧困層に集中しており、感染流行国における健康を確保するためにもその根絶が求められていて、SDGsのターゲットの一つに含まれる。医薬品の開発が天然物から始まることが多く、実際に天然物がマラリア薬となっている例があるにもかかわらず、天然物の抗マラリア薬研究が多いとはいえない。天然物化学の研究者にとって生物試験が容易でないことが大きな理由であるが、Imam Fathoni君は自ら共同研究を計画して、本研究を実施した。紅藻ソゾ類と藍藻類から多数の純粋な化合物を準備して試験した結果、数種の藍藻由来の化合物に抗マラリア活性を見いだした。これまで抗マラリア活性が知られていないタイプの化合物であり、今後マラリア薬のリード化合物となることが期待される。
 以上の研究は、同君の出身国であるインドネシアでも多くの人が苦しむマラリアの対策に可能性を与えるものであり、化学的な分析も含めて、優れた研究成果として高く評価できる。
 以上の理由から、本論文は環境起学専攻の理念と目的に合致し、受賞に相応しいと認められた。

Graduate School of Environmental Sceince, Hokkaido University