2015年度沼口賞受賞者および受賞理由

2015年度沼口賞受賞者および受賞理由

【2015年度沼口賞受賞者】
三浦 一輝 (河川希少種の陸への波及効果:カワシンジュガイ属はエゾアカガエルの越冬地を提供するか?)
論文要旨


【選考理由】
生態系の構造や変化に伴う生物多様性や諸機能の低下は地球規模で進行中であり、その機構の解明や対策の提案は喫緊の課題である。本研究は、保全の重要性が高い湿地景観において、その構成要素である河川・湿地・森林の相互作用の一部を明らかにした。陸域で物質循環に大きな役割を果たすカエルの一種(エゾアカガエル)が、道東の湿地において、越冬期にかけて森林・湿地から河川へと移動すること、また、河川に生息する淡水二枚貝(カワシンジュガイ属)の創出する越冬環境に強く依存することを示した。1年目は野外観測、2年目は前年の結果より導かれた仮説を検証する野外実験と、効率的かつ発展的に挑戦的な課題に取り組んだ。絶滅が危惧されるカワシンジュガイ属の保全が陸域生態系の諸機能の保全にまで波及する可能性を示し、当該地域の生態系保全に対して具体的かつ斬新な管理手法を提案した。

以上の研究は、軟体動物と脊椎動物が生態系タイプの境界を越えて複雑に相互作用をする事例として生態学的に高い新規性が認められ、また実践的な示唆に富む応用生態研究の好事例である。湿地や冬季という過酷な環境下での綿密な現場観察・計測への挑戦、そして重層的な研究計画・成果は高く評価できる。

以上の理由から、本論文は環境起学専攻の理念と目的にもっとも合致し、受賞に相応しいと認められた。


沼口賞受賞者選考委員会
豊田 和弘(委員長)、田中俊逸、渡辺悌二、佐藤友徳



沼口修士論文賞は、自然をこよなく愛し、その仕組みを理解しようと多大な情熱を以って数々の優れた研究に取り組んだ故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐような研究を奨励する趣旨で2001年に設立されました。環境科学院への改組に伴い、 2006年度からその授賞母体が環境起学専攻に移りました。本論文賞は毎年、環境起学専攻の当該年度の修士論文の中から、専攻の理念にふさわしい優れた研究を論文賞選考委員会が選考し、授賞します。
過去の沼口賞

Graduate School of Environmental Sceince, Hokkaido University