2014年度沼口賞受賞者および授賞理由

2014年度沼口賞受賞者および授賞理由

沼口修士論文賞は、自然をこよなく愛し、その仕組みを理解しようと多大な情熱を以って数々の優れた研究に取り組んだ故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐような研究を奨励する趣旨で2001年に設立されました。環境科学院への改組に伴い、 2006年度からその授賞母体が環境起学専攻に移りました。本論文賞は毎年、環境起学専攻の当該年度の修士論文の中から、専攻の理念にふさわしい優れた研究を論文賞選考委員会が選考し、授賞します。
2015年3月25日修了祝賀会において「沼口賞」の授賞式が行われました。

沼口賞授賞者選考理由
友貞 俊成君 「地球温暖化による気温上昇の不確実性を考慮した北海道産てん菜の糖量予測」

地球温暖化に代表される気候変動が人間社会に様々な影響をもたらすことが懸念されている。将来的に温室効果ガスの排出削減を達成したとしても、ある程度の気温上昇は避けることができない状況になりつつあることから、気候変動による負の影響を軽減するための対策、すなわち適応策の推進が求められている。本研究では、我が国最大の食料生産地である北海道に着目し、不確実性を考慮した最新の気候モデルデータを用いて、将来のてん菜収量および品質の変化予測を行った。その結果、予測モデルの不確実性に関わらずてん菜の収量は増加、根中糖分は低下する可能性が高いことが分かった。一方、てん菜糖量の将来変化は気候予測モデルの不確実性によって増減の傾向が大きく異なった。気候予測データを丹念に解析した結果、5〜6月の気圧配置のパターン、および春の融雪時期の違いが、予測結果に大きなばらつきを生じさせていることが明らかとなった。

以上の成果は、作物の品種開発や栽培適地の検討に有用な情報を提供し、気候変動に対する北海道農業の適応に寄与することが期待される。さらに、北海道における気候予測の不確実性についても気象学的視点から要因特定が試みられており、気候モデルを精緻化するための方向性を提示する研究としても高く評価できる。

沼口修士論文賞は故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐ研究を奨励する趣旨で前大気海洋圏環境科学専攻の修士課程修了学生を対象として設立されたものであるが、2006年度からは改組に伴い環境起学専攻の論文賞として引き継がれ、環境起学の理念にふさわしい優れた研究を行い修士論文をまとめた学生の中から選考されることになった。本委員会では論文(研究)の完成度はもとより、課題解決型であるか、分野横断・統合性についての評価を行った。環境起学は環境と環境の変化を科学的に調べると同時に、得られた知見を利用して包括的かつ統合的な環境の改善や修復に役立てる方法も探索する学問であるとするならば、本論文は環境起学専攻の理念と目的にもっとも合致し、受賞に相応しいと認められた。

沼口賞受賞者選考委員会
藤井賢彦、高田壮則、豊田 和弘、石川 守(委員長)


【参考】
過去の沼口賞

Graduate School of Environmental Sceince, Hokkaido University