2013年度沼口賞受賞者および授賞理由一覧

2013年度沼口賞受賞者および授賞理由一覧

2013年度沼口賞受賞者および授賞理由一覧
沼口修士論文賞は、自然をこよなく愛し、その仕組みを理解しようと多大な情熱を以って数々の優れた研究に取り組んだ故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐような研究を奨励する趣旨で2001年に設立されました。環境科学院への改組に伴い、 2006年度からその授賞母体が環境起学専攻に移りました。本論文賞は毎年、環境起学専攻の当該年度の修士論文の中から、専攻の理念にふさわしい優れた研究を論文賞選考委員会が選考し、授賞します。
2014年3月25日修了祝賀会において「沼口賞」の授賞式が行われました。

沼口賞授賞者選考理由

1.広田沙紀君:アルギン酸イオンを鋳型として用いた銀ナノ粒子の合成
 資源少国かつ国土の狭い日本では、少量で高い機能を発揮するナノマテリアルの活用は重要であり、その製造及び使用の過程でもできるだけ簡便、安価でかつ環境負荷が低いことが望ましい。通常ナノ粒子は表面エネルギーが大きいために本質的に凝集しやすく、使用にあたってはいかに分散するかが常に問題となる。従来、界面活性剤、金属キレート剤、有機溶媒等が分散性付与に使用されてきたが、その有効性と環境汚染の可能性が問題であった。
金属ナノ粒子の中でも抗菌性、高導電性、低温融接性など多様で著効な機能性を有する銀ナノ粒子は特に需要が高い。本研究では、海洋国日本で豊富な海藻を原料とするアルギン酸ナトリウムを活用し、ナノ粒子の核生成をコントロールし粒子の保護膜ともなるテンプレートとして機能させた合成方法を開発した。本方法では粒径が10nm以下と小さく、表面電荷の静電反発力と保護膜効果により合成当初からすぐれた分散性と長期安定性を有し、特別な表面処理を必要とせずに単純な製造プロセスで銀ナノ粒子を作製することができる。さらに作製したナノ粒子を様々な分析・観察手法で解析し、応用の可能性についても、光触媒への可視光応答性賦与と抗菌効果をそれぞれ確認している。
 研究にあたっては、実験を企画し、問題点では積極的にアドバイスを求めて克服し、実験的にも考察の上でも緻密な内容となっている。成果の一部は国際学会でも発表するとともに、想定質問に対する数十枚の返答用スライドを用意していたが、その過程で間違い無く実力をつけたことだろう。
以上のように本研究は、広田沙紀君自身の着想と推進力によってなされたものであり、資源を有効利用し、簡便、安価で環境負荷が小さく、他の材料にも応用可能な一般性のあるナノ粒子の合成方法を提起した点で高く評価できる。よって、本論文は沼口賞の理念と環境起学専攻の目的に合致し、同賞に相応しい優秀な論文と認められた。

 沼口修士論文賞は故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐ研究を奨励する趣旨で前大気海洋圏環境科学専攻の修士課程修了学生を対象として設立されたものであるが、2006年度からは改組に伴い環境起学専攻の論文賞として引き継がれ、環境起学の理念にふさわしい優れた研究を行い修士論文をまとめた学生の中から選考されることになった。本委員会では論文(研究)の完成度はもとより、環境課題解決性、分野横断・統合性、斬新さの観点からも評価を行った。環境起学が環境とその変化を科学的に調べると同時に、得られた知見を利用して包括的かつ統合的な環境の改善や修復に役立てる方法も探索する学問であるとするならば、本論文は環境起学専攻の理念と目的に最も合致し、受賞に相応しいと認められた。

沼口賞受賞者選考委員会  石川 守、蔵崎 正明、渡邉 悌二、藤井 賢彦(委員長)



2.駒澤 皓君:東南極宗谷海岸の空中写真アーカイブデータ発掘とステレオペア画像を用いた氷床表面標高変化の検出
 極域に現れる地球温暖化の影響を定量的に明らかにすることは、現状認識や将来予測にとって重要な課題の一つである。最近の人工衛星による観測によって氷床の質量変化や表面高度変化が検出されるようになったが、それによってさかのぼれるのはせいぜい20年程度までである。本研究は、半世紀以上にわたって観測を継続してきた日本南極地域観測隊の航空写真の存在に着目し、それらと近年の地球観測衛星「だいち」による可視光ステレオペア画像とを組み合わせて、より長いスパンでの氷床縁変動を明らかにすることを目指したものである。これまで南極地域観測隊が撮影した1万枚を超える空中写真を発掘・整理して、実体視による3次元解析が可能でかつ多時期による追跡が可能なステレオペアを選定した。それらのうちのラングホブデ地域の画像を用いてについて図化システムを用いて3次元地形解析を行い、40年間にわたる変動を2期間に分けて明らかにすることに成功した。この過程で、得られた3次元情報の誤差評価を行い、空中写真の保存状態や撮影状態の質を選べば、衛星観測と比べても遜色のない精度が得られることも明らかにした。
 このような成果は、東南極氷床変動の解明にとって重要な貢献であるとともに、今後、同手法による解析範囲の拡大や他地域への応用も期待される。また、本研究手法によって数十年以上の時間規模での氷床縁変動の検証が可能になったことは、長期トレンドとして捉えられるべき地球温暖化研究にとっても大きな前進である。よって、本論文は沼口賞の理念と環境起学専攻の目的に合致し、同賞に相応しい優秀な論文と認められた。

 沼口修士論文賞は故沼口敦助教授の遺志を引き継ぐ研究を奨励する趣旨で前大気海洋圏環境科学専攻の修士課程修了学生を対象として設立されたものであるが、2006年度からは改組に伴い環境起学専攻の論文賞として引き継がれ、環境起学の理念にふさわしい優れた研究を行い修士論文をまとめた学生の中から選考されることになった。本委員会では論文(研究)の完成度はもとより、環境課題解決性、分野横断・統合性、斬新さの観点からも評価を行った。環境起学が環境とその変化を科学的に調べると同時に、得られた知見を利用して包括的かつ統合的な環境の改善や修復に役立てる方法も探索する学問であるとするならば、本論文は環境起学専攻の理念と目的に最も合致し、受賞に相応しいと認められた。

沼口賞受賞者選考委員会  石川 守、蔵崎 正明、渡邉 悌二、藤井 賢彦(委員長)

【参考】
2013年度沼口賞ノミネート論文
過去の沼口賞

Graduate School of Environmental Sceince, Hokkaido University