NEWS LETTER 第2号 (2003年 夏) |
海洋物質循環モデリングの新しい役割をめざして 程木 義邦 ほどき よしくに |
触媒を用いた硝酸汚染地下水の浄化 三上 いっこう みかみ いっこう |
工場廃水、窒素肥料、家畜し尿、生活排水などを発生源とする硝酸イオンによる地下水の汚染が顕在化しています。平成12〜13年に実施された北海道内の井戸水の水質調査によると、硝酸性窒素および亜硝酸性窒素の環境基準値を超える検体は5.7%にのぼっています。硝酸イオンは、メトヘモグロビン血症や糖尿病を引き起こすなど、人体に有害であることが指摘されており、浄化技術の開発が必要とされています。
私たちは、水中硝酸イオンを固体触媒を用いて還元除去する技術の開発を行っています。これまで水の浄化は主にバクテリアによるバイオ法で実施されていますが、この方法には反応速度の遅さや維持管理の煩雑さという課題があります。それに対し固体触媒法は、高速、小規模設備での除去が期待できる新しい方法です。
実用の観点から安価な卑金属を中心に有効な固体触媒の探索を行ってきた結果、Ni微粒子が硝酸イオンの水素還元に活性を示し、さらにごく微量の白金を添加すると室温付近で従来のバイオ法の100倍以上の超高速で200ppmの硝酸イオンを完全に水素還元できることをこれまでに見出しています。この触媒はNH3の生成が多く、現時点ではばっ気による除去システムとの組み合わせが必要ですが、N2選択性向上によって、一段での完全無害化も実現可能です。
ドイツでは世界に先駆けて、地下水の硝酸還元除去をPd-Cu合金触媒で実用化しています。しかし、触媒寿命や触媒コスト等がネックとなっていて、全世界的な普及には至っていません。そのため、開発した触媒の耐久性や、共存するイオンやバクテリアによる影響など実用の際問題となるような点についても検討したいと考えています。さらに、低濃度硝酸イオンにとどまらず、屎尿処理場、化学工業、食品加工業などでの高濃度廃水の処理への適用性を明らかにするなどにより、固体触媒を用いた新たな水浄化システム構築の研究を進めていきたいと考えています。
9月29日に本研究科設立10周年記念シンポジウムを開きます。COEプログラムはその中核を占めています。もしお時間が許せば、ご出席ください。 |